ホグワーツ城の修繕は難を極めた。
学校は休校せざるを得なくなって、一部の上級生以外は皆帰宅させられた。学校に残った者たちは手分けして学校の修繕に手を尽くし、再び闇の魔法使いたちが攻めてくるかも知れぬ状況に戦慄していた。
けれどわたしは知っている。セブルスは今ごろ闇の陣営でヴォルデモートに限りなく近い場所にいるのだろう。ヴォルデモートはハリーを狙っているのだし、セブルスはもう二度とホグワーツを襲わせるような無駄な真似はさせない。
周りが皆戦慄している中、わたし一人がぽかんとばかみたいに平和呆けしたようなそぶりを見せていたので、わたしは周りから完全に孤立してしまったけれど、そんなことは別にどうでも良かった。完全に他力本願ではあるのだけれど、早くハリーたちがヴォルデモートを倒して元の暮らしに戻れる日を待ち望んで、ただ1日1日を過ごす事に必死になっていた。

早くセブルスに会いたいよ。


私と身重になったドーラの元に、ミネルバから手紙が来た。
内容は、花子がぼんやりと抜け殻のようになってしまってとても心配している。普通の日常生活は何も問題ないのだが、これ以上ここに縛り付けておくのも酷だ。だから彼女を引き取ってもらえないか。というものだった。
私とドーラは顔を見合わせてすぐに返事を書いた。答えはイエスだ。私たちも彼女のことを心配している。ダンブルドアのお気に入りだったという彼女は、私たちの目から見てもセブルスの事を心から愛していた。大事な人を一度に二人も失うという事は、とても辛い事だ。それに彼女は、幼い頃に両親も亡くしているらしい。本当の意味で一人ぼっちになってしまった七市野の子の心境の程はわからないが、私たち夫婦がいたたまれない気持ちになるくらいには悲惨なことなのだと思う。
しかし、ミネルバに返事を出した翌日、なんと花子本人から手紙が届いたのだ。
彼女の字はしっかりとしていて、あの惨事が起こる前と全く変わらない様子の手紙だった。ともすれば、花子がこのことを予想していて、未来の私たちに宛てた手紙を書いていたとも思えた。

親愛なるムーニーへ

お体の調子はどうですか?風の噂で、トンクスさんとご結婚なされたと聞きました。しかも彼女のお腹には赤ちゃんがいるとか!奥さんとお子さんのためにも自分の体を大事にしてください。お薬を作ってくれる人が居なくなっちゃったのは残念だけど、私が変わりに作ってあげられるように猛勉強するわね!
そう言うことだから、わたしのことは心配しないでね。わたしは大丈夫。ムーニーが思ってるよりもずっと元気よ。ミネルバったら少し心配しすぎなのよ。
わたしは誰がなんと言おうと、ここを離れたくないの。ここはわたしたちの家だし、家には帰りを待つ人が居た方が良いでしょ?
とにかく!ムーニーはトンクスさんとお腹の子の心配だけをして良いお父さんになってください。

花子より


私は情けなくも泣いてしまいそうになった。
花子は強い心を持っている。皆が挫けそうな時に、彼女は一人だけでも挫けない様にしっかりとその両足を地面につけている。自分の意思で。
ああ、私も花子ちゃんみたいに強い愛情を持ちたいわとドーラが隣で笑った。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -