結論から言って、ドローレス・アンブリッジは闇の魔術に対する防衛術の教授からもホグワーツ高等尋問官からも(自称)校長からも失脚した。
ハリーが自らの手でヴォルデモートの復活を魔法省のコーネリウス・ファッジに知らしめたらしい。
この時、わたしはまたしても彼らと行動を共にしていなかったのだけれど、5年生最後の日に、しかもアルバスから聞かされてそれを知った。「聞いたわよ、ハリー」とハリーたちに詰め寄ったら、3人は苦笑いでわたしを迎えてくれた。「怪我は大丈夫?わたしってばまた何も知らないままのんきに紅茶を飲んでいたわ。まったく、やんなっちゃう」と愚痴をこぼせば、ハリーが慌てて「そんなことないよ!君の呪文のおかげさ!」と叫んだので、ハーマイオニーが溜息をつき、ロンは笑った。
こうして苦痛の1年間があっけない形で終わってしまったのだった。


「ねえセブルス」

「なんだ」

「わたしやっぱり同じことを5年も繰り返していて思ったのだけど、わたしはいつも肝心なところを押さえていないというか、要領が悪いというか・・・なんていうか、間が抜けていると思うのよ」

「なぜそんなことを思う。君は私から見てもとても優秀だと前にも言っただろう」

「そうじゃないのよ。勉強とかは努力すればなんとでもなるわ。でもね、わたしが言いたいのはそう言うのじゃないの」

わたしは一旦言葉を区切ると、少し考えてから暖かい紅茶を口に運んだ。セブルスがいれた紅茶はいつも美味しい。ほうと息を吐くと、セブルスが続きを促すようにこちらを伺った。

「毎年ホグワーツではいろんな事件が起こるでしょう?それはどれもハリーと関係しているみたいなんだけれど、わたしはいつもその肝心なときに居ないというか、なんというか・・・・・・なんていうか、もどかしいのよ」

「それらの全ては必ずしも君が関わらなくてはならないものではないだろう。気にすることではない」

セブルスがなんでもない事のように言うので、わたしは手元の紅茶に目線を落とした。「わかってるけど・・・わたしが何も出来ない事くらい。でもね、少し気になるじゃない?」

「いくらそわそわしたって過去は変わらんだろう」わたしに習うようにセブルスも手元に目線を落とし、少し言いよどんでからまたわたしの顔を見た。「それに、君にはこれから思う存分関わってもらうので心してかかるように」わたしも釣られて顔を上げる。空気が一瞬にして変わった、気がした。「・・・・・・え?・・・それって、どういうことなの?」セブルスの黒い双眸から目が離せない。まるで時間が止まったかのように、自分の体が動かなかった。

「私にはもう時間が無い。よく聞きなさい、花子」

喉がからからになって、わたしは自分の緊張を解くためにも紅茶を一口、口に含んだ。ゆっくり嚥下すれば冷えた体が温まった気がした。

「もう君は十分なくらい私を慕ってくれた。この間の続きのようになってしまうが・・・全ての事を、君に話そう」

そう言って話し始めたセブルスの表情は、やはりつらそうなものだった。


セブルスの話は、ハリーの両親が亡くなった所から始まっていた。
最愛の親友の息子を守ることを誓った事、わたしが事件に巻き込まれないように手を回していた事、敵も味方も欺くためにたとえ嫌なことだろうと成し遂げなければならない事、アルバスに頼まれた事、セブルスは包み隠さず話してくれた。わたしは黙ったまま全ての話を聞いた。

「私は、なんとしてでもリリーの息子を守り通したい。そのために、近々ここを出て行かなければならない・・・。ダンブルドア校長はこう仰った。『わしはいずれ闇の帝王に命を狙われる。そうしたら、必ず信頼が置けてホグワーツに殉ずるものに命令を下すじゃろう。その時はセブルス、なんの躊躇いも無くわしを殺すのじゃ』と。そうすれば闇の帝王は私をより信頼し、近くに置くだろう。そうすれば、ポッターの身に危険が及びそうになったとき、私が何か手を回すことが出来る」

ああ、なんて辛い人生なのだろう。この人の生は。
セブルスは明確には言わなかったけれど、彼がハリーのお母さんの事を愛していたことは痛いほど伝わってきた。その女性からの最愛を受けられなかったのに、それでも彼女の願いを守りたいと言う。ハリーに嫌われるように振舞って、彼女の面影を必死に追いかけている。決して追いつくはずも無い事を知っているはずなのに。
セブルスはいつまで身に覚えの無い罪の罰を下され続けるのだろう。
偽りの罪から真実の罪を作り出して、永遠に、苦しむのだろうか。
彼はどうやったら救われるのだろうか。救われることがあるのだろうか。

許されるなら、わたしが救いたい。そうすれば自らが罰を受ける事を知っているけれど、そうしたい衝動が湧き上がってきた。その衝動に身を任せてセブルスを思い切り抱きしめると、セブルスは少しだけびくりとしてわたしの背中に手を回した。

寄り添うようにセブルスの胸に頭を預けると、聞こえてきた心臓の音がまるで鉄槌の音のように聞こえた。

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