その後、授業が始まってから事態は最悪に最悪を重ねていった。
ヴォルデモート卿が復活したというのに、魔法省はそれを全否定。ハリーとアルバスは嘘つきのレッテルを貼られてしまうし、生徒たちが今学ばなければならない闇の魔術に対する防衛術もドローレス・アンブリッジが呪文を使わないように使わないようにとしているおかげで勉強の意味になっていない。これまでホグワーツで闇の魔術に対する防衛術を勉強してきて始めてこの科目が座学になってしまった。この事実を嘆いているのはわたしだけではない。ハリーたちもそう思っているようだった。彼らは独自で防衛術を勉強するべく必要の部屋に集っては呪文の勉強をしているらしい。それにはわたしも誘われたのだけど、セブルスに相談したところ「花子は確かに少し攻撃呪文を覚えた方が良いかもしれない・・・しかし、それを教えるのは私の役目であってポッターではない」と言われた。攻撃呪文というより、対抗する術を学ぶためだし、どちらかというとわたしは教師側で声をかけられていた。なにしろ、このなかで守護霊の呪文を使えるのはハリーとわたしだけなのだから!「それにドラコが君の事を目の敵にしているからな。あいつならばすぐに君の粗を捜し出してアンブリッジに密告するであろう。奴には気をつけたまえ」セブルスは続けざまにそう言うと、少し言いづらそうに「それに、花子、君は私の事だけを見ていてくれ」と言われたものだからたまらない。わたしは顔を赤くして頷き、ハーマイオニーにはごめんねと謝るしかなかった。その際ハリーには「やっぱり君も僕の事を信用してないんだろ!?」と怒られてしまったが、「そんなことないわ」と言うだけで他には何も効果的なことは言えなかった。

そして、セブルスと会える時間はだいぶ減ってしまった。

これがわたしにとって一番辛い事ではあるのだけれど、誰もいない所を見計らってこっそりと授業の質問に行くような感じで会いに行っては相談したりちょっとした呪文を教えてもらったりしている。わたしがハーマイオニーにその事を話すと「なんて涙ぐましいのかしら・・・」と頭に手をやって項垂れて、わたしが新しい呪文を学んできた時にはその呪文を教えろとせがんできた。

ホグワーツは日に日にギクシャクしていっている。たまに疲れた顔をしたマクゴナガルと廊下ですれ違うと、わたしはそんな事を思った。

『ホグワーツ高等尋問官』といういかにも間の抜けたものに就任したドローレス・アンブリッジは、大広間の前の廊下に新しく作った規則をフィルチに掲げさせる事に大忙しらしかった。そこで多忙となった彼女は自分の手足となる『親衛隊』を作り、自分の目で監視できない所を彼らに監視させた。そしてそこにはドラコ・マルフォイが所属した。自分で組織やグループを作るのは禁止しているくせに、なんてこと!
ドラコ・マルフォイはもともとわたしの事が嫌いであったので、すぐにドローレス・アンブリッジはわたしに対する態度を改めた。地味で目立たなかったはずのわたしが、週の3日は罰則として彼女の部屋の掃除をさせられる羽目になったのだ。掃除をしていると、罰則を言いつけられた他の生徒たちが彼女の部屋に来ては泣きながら帰っていくのをたくさん見た。(そしてそれはグリフィンドールの生徒が多かったように思う。)もしかしたらこうしてわたしに見せるのが彼女の本心の罰則だったのかもしれない。

授業と図書室通いと罰則の無限ループに嫌になってきた時、セブルスがわたしに一冊の本を手渡した。夕食前という事もあって大勢の生徒が通る廊下で、やけに声を張って「ミス・七市野・・・この間教室に誰かが忘れていった本なのだが、これは君のかね」と言った。わたしは違いますともなんとも言えずにセブルスの瞳を見つめると、彼は一瞬柔らかく目を細めてからフンと鼻で笑った。「もしや我輩の授業で別のことを考えていたのではあるまいな?そうだとしたら実に嘆かわしい。グリフィンドール、1点減点」「い、いってん・・・」呆けているわたしに無理やり本を持たせると、セブルスはローブをはためかせながら去っていってしまった。心当たりの無い本を手渡されて固まっていたわたしだったけれど、その本がセブルスの所有物であることに気が付いた。わたしは急いで部屋に戻ると、本のページを捲る。一ページ目には羊皮紙がはさまれており、そこにはセブルスの綺麗な字が。

『すまない、監視されている中で自然に接触するとしたらこの手しかなかったのだ。私を許してくれ』

まさか、セブルスはこんなに思い悩んでわたしにこの本を渡そうとしていなんて・・・!悶々としながらこの羊皮紙を書いているセブルスが脳裏を過ぎってしまってわたしは少しだけ笑った。羊皮紙には続きがあった。

『実は君の“ペンフレンド”とやらから手紙を預かっている。大分前に私の手元にあったのだが、なかなか君に渡す気にはなれずにずっと持っていた。しかし、奴から催促の手紙が毎日のように届いたのでこれはまずいと思い渡す決心をした。ずっと黙っていて悪かった。これも謝っておこう。それから、この羊皮紙は読んだら燃やすように S.S』

セブルスは紙面だと少々饒舌になるらしかった。わたしは今度の授業でこの本を教室に置き忘れようかなと思った。もちろん合同授業じゃない時に。誰にも見つからずにこっそりと。
そしてわたしはページを捲っていき、一通の手紙を見つけた。宛名しか書いていなかったけれど、それがムーニーからの手紙であることは字を見てすぐにわかった。

『私たちの可愛い花子へ

元気そうでなにより!ハーマイオニーがあんまりにも花子の心配をしていたものだから、本当の事を知っていても少し心配になってしまったよ。
アンブリッジは魔法省の力を盛大に振るっている所だと私とパッドフットは予想しているのだけど、それは当たっているかい?もしそれが本当なら、セブルスに手紙を託しておいて正解だったよ。もしかしたら手紙も検閲されるかもしれないからね。君も手紙を出すときは気をつけるように。
それから、あまり目立つような事をしてアンブリッジに目をつけられないように。まあ、君にはその心配は無いかもしれないけどね。
ああ、そうだ。もし君が図書室に通ってマダム・ピンスと仲良くなれる日が来たのなら、ほとんどの時間を図書室で過ごすと良い。アンブリッジもさすがに学生の本分である勉強とより強く結びつく図書室をどうにかするわけにはいかないだろうし、一部の本が禁書に指定されていてもマダム・ピンスと仲良くなればそれが見れるようになるかもしれない。彼女はホグワーツの全ての本を自由に見る事ができるからね。

最後に、なにかあったら遠慮なく私たちを頼りなさい。もちろん、セブルスの事も頼ってやってくれ。そして近くで見守ってやれない私たちをどうか許してくれ。
 
ムーニーより』

わたしはセブルスが書いたメモを燃やすと、セブルスとムーニーにそれぞれ手紙を書いた。一通は本の中に、もう一通はポケットの中に仕舞った。
それから、わたしは時計を見て完全に夕食を取り損ねた事を知ると、肩を落として机の引き出しからチョコレートバーを取り出して齧る事に専念した。

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