5年生になった。新入生の組み分けが終わり晩餐が始まると、ハーマイオニーはわたしの事を抱きしめた。

「ああ、花子!元気だった?私達、あなたの事すっごく心配していたのよ」

「ありがとう。わたし、ちょっと事情があってね・・・。この事は談話室に戻ってから話すわ」わたしは教員席の方をちらりと盗み見てから小声で返すと、「それよりもハーマイオニー、ロン、監督生になったのね。おめでとう!」ハーマイオニーとロンに賛辞の言葉をかければ、2人とも素直に喜んでくれた。

「ハーマイオニー、ハリー、ロン。驚かないで聞いてね、実はわたし・・・」談話室について、一通りの騒ぎが過ぎ去った後、ようやく人もまばらになった談話室でわたしは3人に口を開いた。まだ本当の根底の真実を言うつもりはないのだけれど、少しくらいは本当の事を言わなくてはいけないと思っていた。「去年の対抗試合の時、体調不良だって言っていたけれど、実はあれ嘘だったの。・・・ごめんなさい。わたし、あなたたちが傷つくのを見るのが怖くて、逃げていただけなのよ。わたしはみんなの事、守る事は出来ないから」目の前のグリフィンドールカラーのネクタイと紋章を見て情けなさがさらに上乗せさせられた。こんなわたしがグリフィンドールだなんて。

「あー、花子、君に特別なにか出来る事があるだなんて、僕たちは思ってないよ」

「ロン!あなたって本当にデリカシーがないのね!」

おろおろしながら言ったロンをハーマイオニーがキッと睨みつけると、ハリーが咳払いをしてから口を開いた。エメラルドグリーンの瞳がわたしを見据える。「花子、君が悔やむ事じゃないよ。僕たちは自分で自分の身を守れないといけないんだから」

「そんな事よりも、聞いたよ。君も不死鳥の騎士団のメンバーになったんだって?」

「ええ、そうよ。まだセブルスと一緒に挨拶に行ったくらいでわたしは会議にも参加させてもらえていないのだけどね」

「僕たちも未成年だからってまだ会議に参加させてくれないんだ。フレッドとジョージがやけになって聞き耳を立てていたよ」

「そうね、まさに聞き耳を立てていたわね」

ハリーが溜息をついてソファに身を沈めた。ハーマイオニーがロンに皮肉っぽく言ってから、早く部屋に戻ってあなたの話を聞きたいとうずうずしながら目で訴えてきたのでわたしは「話を聞いてくれてありがとう」と締めくくりの言葉を口にした。そして「あ!」と思い出して声をあげる。「今年のDADAの教授には気をつけた方が良いわ。ドローレス・アンブリッジ。彼女魔法省の人間でハリーの事を気にしているらしいわ。おまけに性格は最悪だって。セブルスが注意するようにと口がすっぱくなるくらい言っていたわ。特に目をつけられない事。・・・まあ、ハリーには無理だろうけど」最後は冗談めかして悪戯っぽくウィンクしながら言うと、ハリーは疲れた顔で「そうだろうね」と肩をすくめた。

「じゃあ、もうそろそろ寝ましょう。ハリー、ロン、おやすみ」

ハーマイオニーは2人に軽く挨拶を済ませるとわたしの手を引いて部屋に戻った。彼女お得意の魔法で部屋に施錠と防音魔法が施される。
「あなた、対抗試合の時はずっとどこにいたの?」いつかしたみたいにわたしをベッドの淵に座らせて、その隣に自分も座って単刀直入に問いかけた。「ずっとセブルスの部屋よ。新学期が始まる前までは一緒にいたわ」それに簡潔に答えて肩を落としていると、「それじゃあっ、やっと両思いになったのね!」満面の笑みを顔に浮かべたハーマイオニーがわたしの両手を掴んでぶんぶんと振った。それに対してわたしは明るい返事を返す事が出来なかった。

「そういうわけじゃないのよ。確かにわたしたちは心から信頼していると言えるかもしれない。でもそれはまだ愛に繋がっていないんじゃないかなとわたしは思うの。わたしはセブルスの事を愛しているし、セブルスからの好意を感じる時もあるけどね。それに、さっきも言ったけど、あのドローレス・アンブリッジには気を付けた方がいいわ。セブルスは自分が特定の、しかもグリフィンドールの生徒の事を気にかけているのがばれるのを恐れていたの。だから、今年はなるべく接触を避けるようにと・・・」

「そんな・・・!あんまりだわ」

ハーマイオニーはわたしよりも悲しそうな顔をしていた。ハーマイオニーの顔を見つめていると、急に目をつりあげて鼻息荒くまくし立てた。「本部でルーピンが言っていたわ、どんな事情があるかわからないが、そこまで隠したいのなら本部に隠しておけばいいと。わたしもその意見には賛成だわ。なぜハリーは隠してはいけないのにあなたは隠さなければならないの?本部にいた方がよっぽど、辛くないし安全だわ」
わたしの事を思って怒ってくれているのは良くわかる。だからこそ、申し訳なく思う。「ごめん、ハーマイオニー。わたしはセブルスの判断に賛成しているわ。わたしはどこにいても安全だし、セブルスがいないところの方が辛いのよ。ここなら彼の顔を見る事だって叶うわけでしょう?」

「あなたって本当に・・・もういいわ。あなたが納得しているのならそれで良しとしましょう。私たちもあなたたちの事を応援しているわ。何か困った事があったら言うのよ?手助けくらいなら出来るかもしれないわ」

ハーマイオニーはそれだけ言うと部屋にかかった魔法をといて自分の荷物から着替えやらなんやらを引っ張り出すと、シャワールームに向かっていってしまった。久しぶりに傲慢知己なハーマイオニーを見て、わたしは少しだけ笑った。そしてふと思い出して机にかじりついた。ハーマイオニーが暗にリーマスが心配していたと言っていたので、手紙を出しておこうと思ったのだ。


『親愛なるムーニーへ

春休みの間は一回しか顔を出せなくってごめんなさい。元気にしていましたか?
わたしの方は久しぶりに傲慢知己なハーマイオニーを見れてとても嬉しいです。
さて、今年のDADAの教授にはドローレス・アンブリッジという女性が就任されました。彼女はミセス・ノリスのお墨付きをもらうくらいには素敵な人みたいです。でも彼女はミセス・ノリスの事が嫌いみたいだけれど・・・なんせ初日から手痛く引っかかれているのでね!
そんな彼女の事だからこれから何が起こるのか不安です。もしかしたら手紙も出せなくなるかもしれないわ。
でもね、ムーニー。わたしはここにセブルスがいるという事実だけでやっていけると思うの。もし耐え切れなくなったらセブルスに教えてもらったセクタムセンプラでなんとかするわ。
ああ・・・でもこの呪文だけじゃちょっと心許ないかな?今度の相手はピープズよりも上なのだし!これからはセブルスの所に行くのじゃなくて図書館に通う時間の方が多くなりそうね!
とにかく、わたしは大丈夫なので、あまり心配しないでください。
ムーニーはお体に気をつけて。

花子』

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