「この間話したと思うが・・・今日は『不死鳥の騎士団』の本部へ行く」

朝食を食べ終わってセブルスの部屋に戻ると、書類を片付けていたセブルスが言った。

「ダンブルドアから話があったと思うが、花子には『不死鳥の騎士団』のメンバーになってもらわなければならない・・・。メンバーに入れば自らの身を危険と隣り合わせの所に置く事になる。・・・それでも、君は本当に、」「ええ、メンバーになるわ。セブルス」心配そうな顔で自分の両手をいじりながらもごもごと言うセブルスの言葉を最後まで聞かずにわたしは答えた。「わたしの心配はしなくてもいいのよ、セブルス。知っているでしょう?」
セブルスはもごもごとまた何か言っていたけれど、一度唸ると「良かろう。では、我輩の後に続きなさい」と観念したように言った。わたしはアルバスの言葉を思い出していた。“どうかセブルスの事を見捨てんでくれんかの”わたしは心の中でもう一度答えた。そんなの、言われなくても!


連れてこられたのは、古い大きな屋敷だった。扉の前でセブルスは角ヒキガエルのはらわたを噛み潰したような顔をしている。大丈夫?と声をかけたかったけど、声をかける前にセブルスが扉に手をかけたのでその言葉は飲み込む事になった。

「やあ、セブルス。待っていたよ――花子!会いたかった」

出迎えたのはムーニーだった。にこやかにセブルスに挨拶をした後、その後ろにいたわたしに気が付いて駆け寄ってきた。

「ムーニー、元気だった?また少しやつれたんじゃない?」

「私はこの通り、元気にしていたよ――セブルス、そんなに睨まなくたってこの後すぐに嫌ってくらい睨むんだから落ち着いて。さあ、花子。新しくメンバーになる君をみんなに紹介しなければならないのだけど、その前にこの家の家主を君に紹介したいんだ。二人とも付いて来てくれるかな」

にこやかなまま歩いていってしまったムーニーの後にサッとセブルスが割り込んできて、わたしの手を掴んだ。

「あまり私の後ろから出るな。噛み付かれるかもしれん」

そんな噛み付くようなものがいるのか!わたしは「ええ」と短く返事をして、セブルスのローブを掴んで歩いた。


「シリウス!君を新しいメンバーになる子に紹介したいんだ。君とは初対面のはずだから」

扉を開けて入ったその先で、セブルスの背中ごしにムーニーが男の人に声をかけたのが見えた。男の人は黒い双眸をキュッと細めてセブルスの事を見ていた。

「さあ花子、出ておいで」

振り返ったムーニーがわたしに手招きをしたので、セブルスの体の影から出た。

「サン、こちらがこの家の主で私の親友でパッドフットのシリウス・ブラックだ。シリウス、こちら新しいメンバーの花子・七市野だよ」

「あの、はじめまして。ムーニーからお話は伺っています。よろしくお願いします」

「ああ、君が七市野の子か。私も話は聞いているよ、花子。ムーニーが可愛いペンフレンドが出来て嬉しいと言っていた。こちらこそよろしく」

ブラックが手を差し出してきたので、握手かと思って手をとろうとすると、横から手が伸びてきて握手を阻止した。――セブルスだ。

「それくらいでよろしいかと。花子はまだ他のメンバーに挨拶をして回らねばなりませんのでな。そうだろう?花子」

「え、ええ、はい」

少し驚いたけれど確かに他のメンバーに挨拶をするのも大事だ。ブラックとはまた後でも話す事はできるだろうし、ムーニーが2人の仲をとりもったりしないようにと言っていたので、その忠告を忠実に聞く事にする。
「そんなに慌てたってメンバーは逃げやしないよ」とブラックは言ったけれど、ムーニーが「まあまあ、とりあえずみんなに挨拶してからまたこうやって話せばいいんじゃないかな?」と宥めてくれた。わたしはほっとしてムーニーを見やると、こちらに向かってウインクした。セブルスが「それでは、」と言う。

「あ、また来ますね」

「そうだな。次は何か飲み物でも用意しておくとしよう。待ってるよ」

セブルスは廊下に出ると苦々しげに呟いた。

「あいつの所にはもう行かなくていい」

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