三大魔法学校対抗試合は、一人の生徒が亡くなり、ハリーがヴォルデモートを退けて結末を迎えた。
わたしは最後の最後までセブルスの部屋に閉じこもり、結局そのまま一度も外に出る事も無く学年末まで過ごしてしまった。その間セブルスは部屋に帰ってくると毎度決まって一番初めにわたしの事を抱きしめて、大きく深呼吸してからローブを脱いだりなんかしていた。わたしは黙って受け入れて、時折背中を撫でたりしていた。セブルスも相当神経をすり減らしているのか、心なしか溜息が五割増しになっていた。
そして、春休みに入って生徒たちが帰省すると、抱きしめる“癖”は直ってしまった。


「花子、もう君は自分の部屋に戻っても良いのじゃぞ?」

大広間で紅茶を飲んでいると、アルバスにそう言われたので「ああ、アルバス・・・わたしもうしばらくセブルスの所にお邪魔していようかと思っているんです」と返すと、目を丸くしたアルバスが「ほっほっほ、そうかそうか」と笑ってわたしの隣に腰を下ろした。

「ドビー、わしにも茶をくれんかのう」

「はい、ダンブルドア校長!どうぞ」

すぐに紅茶を持ってきたドビーに礼を言うと、アルバスは紅茶を一口飲んで慌ててカップをソーサーに戻した。

「・・・わしにはちと熱すぎたようじゃ。サン、これを貰ってもいいかの?」

「どうぞ、好きなものを」

アルバスはお茶菓子の中からマカロンを手に取ると、珍しそうに眺めてから口に入れた。アルバスは昔からこうして話をはぐらかす癖がある。わたしはアルバスの言葉を待つようにゆっくりと紅茶を一口飲む。マカロンに口の中の水分を奪われてしまったらしいアルバスは、熱い紅茶を飲む事も出来ずにしばらくもごもごと口を動かしていた。

「あー・・・、セブルスはちと物事を抱え込む癖があるのじゃ。彼は守る事が好きなようじゃが、逆に彼の事を守れる人はおらぬ。わしとてセブルスを守ると約束は出来ぬのじゃからのう」

ようやく口内が回復したらしいアルバスは一見すると脈絡のないようなことを言った。わたしはその言葉を聞き流したふりをして糖蜜パイを齧る。そんなわたしにアルバスは「わしからのお願いじゃ。どうかセブルスの事を見捨てんでくれんかの」と眉尻を下げて言った。

「そんなこと、言われなくても」

わたしはついに耐え切れず笑ってしまった。


そして、この頃になるとわたしはピープズに一人で対抗する事が出来るようになっていた。ピープズとまともにやりあっているわたしの事を見て、血みどろ男爵がわたしに声をかけたのはつい最近の事だ。

「ねえ、セブルス聞いて。わたし血みどろ男爵に呪文の腕を褒められたわ」

セブルスの部屋で紅茶をご馳走になっている時にその時の話をすると、セブルスは方眉を上げて驚いた顔をしてみせた。

「そうか。血みどろ男爵はああ見えて才能のある者かピープズの事を嫌っている人間には礼儀を持って接する事がある・・・。よかったですな、サン」

「ちょっと言い回しがへんよ?気付いてる?」

「わざとだ」

「冗談でしょ」

「冗談だ」

あのセブルスが冗談を言うなんて!そうおどけてみせると、セブルスはぎこちなくだけれどふっと優しく目を細めてくれた。それがうれしくて笑みを浮かべると、セブルスは顔を赤くした。

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