「・・・・・・ああ、セブルス、わたしをゆるして・・・」

そう言って私の左腕にある醜い痕に口付けた花子に、思わずびくりと体を揺らしてしまった。許しを請う花子の姿が、自分自身の中にあるそれと酷似していると思ったのだ。
真実を話した私に、花子は動揺を隠しきれていなかったようで、伏し目がちに私の左腕を見つめていた。

「ごめんなさい、セブルス・・・わたし、あなたに対して失礼な事をしていたわ。わたしも、あなたにならわたしの秘密を知っていてもらいたいと思うの。聞いてくれる?」

もう一度私を見上げて言うと、花子はぽつりぽつりと話し始めた。拙い話だったが、今まで彼女の心が覗けなかった理由がそこにはあって、私は彼女の話に聞き入った。

「七市野家にはマルフォイ家や他の純血主義の血筋が混じっている事はご存知ですよね?そして、ドラコ・マルフォイが言っていたように、七市野家以外ではほとんどが闇の魔術に傾倒しているスリザリンの出身者なのに、七市野家だけは頑なにスリザリンを避けている事も。その、スリザリンを避けている理由が、家に代々受け継がれる“愛の魔法”と深く関係しているのです。
・・・七市野家がスリザリンを出さなくなったのはヴォルデモートが生まれるずっと前だったのだけれど、闇の魔法に対してひどく危機感を覚えた祖先が考えた・・・所謂“悪あがき”の結末がわたしたちだった。祖先は強い愛が死の呪いからも命を守る事が出来るという事を知っていた。だけれど、無償の強い愛にはとても大きな代償があったの。それが自分たちの命。七市野家は代々短命で子は一人しかなさないのだけど、それはその代償のせいね・・・。親から子へ強い愛を託すために、親たちは短い人生の中で精一杯子を愛し、その愛が詰まった子は愛する人を見つけ、その人とともに最愛の子を愛した。愛しながら、自分の子に強い守りの魔法をかけた。それが“愛の魔法”。愛した子を永遠に死なせないために、親はその魔法を子にかけるの。その魔法はいかなる死の呪いからも永遠にその子を守り、そして自分の血を受け継いだ子供にだけその魔法を託すことができる、と両親から教わりました。もちろんわたしにもその魔法がかかっています。だから、その“愛の魔法”の存在を隠すためにわたし達は代々これを秘密とし、愛した人にしか教えなかったのだと思います。スリザリンを避けるのも、“愛の魔法”を弱めないための決まりごとで、そして闇の魔法使いにわたし達の存在を知らせないための祖先からの最後の愛情だったのです。
でも、言い方を変えれば、祖先はわたしたちに縛りの呪いをかけた、と言うと簡潔かもしれませんね」

最愛のものだけを愛し続け永遠に守る、愛の魔法。だから彼女はできるだけ人とかかわらないように、なるべく愛情を持たないように閉心術を使っていたのかもしれない。だから彼女の両親は泣く泣く娘を手放して自分たちの嫌う親戚の家に住まわせ、本当の事はいつも胸に仕舞っておきなさいと教えたのかもしれない。私が何も言わないままでいると、花子は自分の手をいじりながら「でも、わたし、ドラコ・マルフォイいわく『優秀なまでに劣性を突き通す一族』の中の劣等性だったみたいです」と視線はそのままにはにかんだ。

「わたしは、本当は心の底から甘えたいと思っていました。でも、どうしてもそれが出来なかった」

それが“決まり”だからと続けた花子に、私はどうしていいかわからず、その手を引いた。簡単にすっぽりと私の腕の中に納まった彼女は、暖かかった。

「他のやつらには最後まで隠し通すが良い。ポッターは闇の帝王には負けないし、闇の帝王が敗れれば、なにか状況がかわるかもしれない」


こんな状況だったのにも関わらず、私はリリーの事を考えていた。彼女なら、こういうときどうしただろうかと。


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