わたしは、本当は心の底から甘えたいと思っていた。

でも、どうしてもそれが出来なかったのだ。



花子・七市野は、かの有名なブラック家とマルフォイ家の血をちょこっとずつ引いた普通の女の子なのじゃ。

ところが、彼女の家はちと変わっておってのう。血筋は誰もが認める正統派純血主義の魔法使い・魔女の家系なのじゃが、――はて、いくつ前の代じゃったかのう――いつの頃からか、彼女の家系からはスリザリンの生徒は出なくなったのじゃ。・・・・・・そうじゃ、これっぽっちもじゃ!

不思議な事に、彼女の家にはいつも子供は一人しか授からず、嫁や婿に来た魔女・魔法使いはいつも血統書でもついていそうな程の純血主義の家系であって、そして、見事なまでにスリザリンの出身者はいなかったのじゃよ。

それがあるからじゃろうか・・・・・・彼女の家系は他の一族たちからは大層嫌われておったらしい。『劣勢の血族』などと・・・・・・ああ、しもうた。こんな話をするつもりじゃなかったのじゃが――しかし前置きがないとこの件については何を言いたいのかさっぱりわからなくなってしまうからのう――まあよい、わしが一番不思議に思うとるのは、『なにゆえ彼女の家系が途切れる事がないのか』ということじゃ!セブルス、失礼な方の意味ではないから、その、あまりキツイ目で見ないでくれんかのう。わしが言いたかったのは『彼女の家系が血を絶やしてはならない理由』の方じゃ。





アルバス・ダンブルドアの大きな一人嘆きを適当に聞き流しながら、セブルス・スネイプは痛み出した頭を宥めるように米噛を押さえた。

ダンブルドアはあの『生き残った男の子』の事で自分の心がいっぱいいっぱいになると、たまに――というか、最近は事あるごとに――この話をする。

この話は一体何度目になるのだろうか。数える事をとうの昔に諦めていたスネイプは今日も早々に自分の研究室の薬品を仕舞っている戸棚の中を思い出す事に集中した。集中しながらも、時たまダンブルドアから求められる問いに、適当に相槌をうつ。「ええ、そうですな」「それは良いお考えで」――そう言えばアスフォデルの球根の粉末を補充しなければならないのだった。



「おや、セブルスがそんなに真剣に考えていただなんてわしは知らなんだ」



「・・・・・・ええ、校長。貴殿もその大切な花子・七市野とやらと同じくらい大切なハリー・ポッターの事でお忙しかったのでは?」



丁度良くダンブルドアが話を振ってきたので、スネイプは話をこれっぽっちも聞いていなかった事をおくびにも出さずに白々しく言った。

早く自分の研究室に戻りたい一心だった。早くアスフォデルの球根の粉末を補充して、ついでに二角獣の角を粉末にしなければならない。



「そうじゃったそうじゃった!わしもやることがまだたくさんあったのじゃった!では、これは頼もしいセブルスに任せるとしようかの!」



「ええ」



何にかはわからないが・・・。何となく違和感を覚えたスネイプだったが、せっかくダンブルドアが話を切り上げてくれたのだ。何も言わないほうが良いと判断し、短く返事だけをして「では、我輩はこれにて失礼します」と言って校長室から出て行った。



「セブルスもああ見えて少々間の抜けたところがあるのう・・・・・・のう?」



スネイプが出て行った後、ダンブルドアは歴代校長たちに向かって至極嬉しそうに目を輝かせながら同意を求めた。

美しいフォークスの抜け落ちた羽を拾い集めている時にふと思いついたような計画(ようなとは言っているが紛れもない事実だ)がこんなにうまくいくとは思っていなかった。
珍しく全員揃った額縁の中の歴代校長たちは少しだけ微笑ましそうに笑った。





翌年、件のハリー・ポッターと花子・七市野がホグワーツに入学した。

そして、ダンブルドアに散々花子・七市野の話を聞かされてきたスネイプは彼女の組み分けに少しだけ興味を示したが、彼女はやはりスリザリンではなかった。それどころか、スネイプは思いもよらず『なぜか』肩を落とすはめになった。





花子・七市野の頭の上に乗った(くたびれた)老いぼれ帽子は一言二言つぶやくと、「グリフィンドール!!」高らかに叫んだからだった。






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