※ちょこっとリリーが愛しくなるので雰囲気ぶち壊したい(希望)



新学期になった。
今年は100年ぶりにトライ・ウィザード・トーナメントがある。
このために外国からやってきたダームストラング専門学校とボーバトン魔法アカデミーの生徒たちから花子のことを遠ざける準備は滞りなくしてきた。ダンブルドアも気にしていたようだったが、ハリー・ポッターが代表選手に選ばれた事で花子よりポッターの事を気にかけるようになった。そのままポッターの心配だけしていてくれればいいと思う。もちろん、私も心配しなかったわけではないが。部屋に飾っていた百合の花を眺めながら、彼女の事を思い出した。大丈夫、君の息子は必ず死なせない。だから安心して笑っていてくれ。
そして、どうか・・・わたしを――


「ゆるしてくれ、」


ぽつり、と、うわ言のように呟くと、リリーが笑いかけたような気がした。「あなたには幸せになってほしい」いつか言われた言葉が頭の中でリフレインする。当時、その言葉にひどく傷付いたが、今ならしっかりと受け止められる。君の願いなら、なんでも叶えよう。

「セブルス、ちょっといいか」

突然部屋の外から聞こえてきた声に、意識を戻した。ムーディだ。「・・・・・・ああ、」私はソファに座りなおして部屋に呪文をかける。百合の香りが無くなって、部屋の雰囲気が少し変わったと思った。扉を開けて客人を招き入れ、今日は花子が来ないことを願った。まあ、花子もポッターを心配するのに忙しいと思うのだが。・・・・・・少し、いやかなり胸の辺りがチクリと痛んだ。


「花子、この袋の中身を確認するように」

廊下ですれ違う際、袋を花子にこっそり渡しながら囁いた。花子は不思議そうな顔を浮かべながらもそれを受け取って、何事もなく歩いていった。袋の中にはフルーパウダーとメモが入っている。『大切な話がある。今夜11時に、誰にも言わずに我輩の部屋に来るように』前に一度私の部屋からフルーパウダーを使って寮に帰っているので、使い方はわかっているだろう。
そして、夜になって11時丁度に、煙突から花子が飛び出してきた。

「ううう・・・気持ち悪い・・・」

「な、だ、大丈夫か・・・!」

飛び出してくるなり、胸元を押さえて蹲る花子に、私は急いで駆け寄り背中を擦った。「酔ったのか」「・・・はい」「前回も酔ったのか」「・・・はい」「なぜそれを早く言わない!」膝裏と背中に腕を回して抱き上げると、ソファの上に寝かせた。花子はまだ制服を着ていたので、ネクタイを取ってシャツのボタンをいくつか外してやった。これで苦しさが軽減されるはず・・・。そして杖を一振りしてティーセットを出すと、温かい紅茶をティーカップに注ぐ。
「少し落ち着いたら、紅茶を飲みたまえ」そう言ってソファを振り返って、後悔した。
大きく呼吸を繰り返し、目を潤ませ、口元に片手の甲を押し付けて必死に耐えている。いつもはきっちり結ばれているネクタイが今は無造作に床に落ちていて、シャツのボタンはいくつか外れて服が乱れている。
普段なら直視できない光景なのだが、私は目を逸らすことが出来なかった。これを、私が、やったのか・・・!目の前の信じられない光景に一瞬絶句し、恐る恐る花子に問いかけた。

「・・・前回酔った時は、このように誰かに介抱してもらったのかね」

「いえ、談話室、だれもいなくて」

それを聞いて、私は全身で安心を体感した。「そうか」、少し落ち着いてきたらしい花子の背中に手を添えて座るのを手伝ってやり、ティーカップを手渡した。「ありがとうございます」花子はすっかり気分が良くなった様子で、礼を述べた。さりげなくネクタイを拾ってテーブルの端に置くと、私もソファに腰掛けた。・・・なんだか、どっと疲れてしまった。

「あ、あの、セブルス先生。大切な話とは一体なんでしょう・・・?」

若干私を気遣いつつ、花子は口を開いた。言いながら紅茶の入ったティーカップを私の目の前に差し出した。私はそれを受け取って一口飲むと、大きく息をついて杖を持ち部屋に呪文をかけるために口を開いた。「マフリアート」それから花子に向き直る。

「よく聞きたまえ。今年、ホグワーツでは大変な事が起こる。だが、君は何も知らないふりをしなければならない。君が最も得意な事ですぞ。私以外の人間には心を閉ざすのだ」

「特に、マッド・アイ・ムーディには気をつけることだ。私は、君を危険な目に合わせたくないのだ・・・本当は、ずっとここに閉じ込めておきたいくらいに」、私がよほど真剣な顔をしていたのだろう。花子は唇をきゅっとへの字にまげて、頷いた。

「なにが、起こるんですか・・・」

「闇の帝王が現れる。ポッターはまた、狙われる。いや、もうすでに狙われていると言っても過言ではありませんな。・・・・・・悪い、私はこれ以上言う事は出来ないが、花子は賢い。察してくれ」

少し俯いて目を伏せた花子の顔からは感情が駄々漏れであったが、やはり心までは読めなかった。
去年ルーピンが花子に、閉心術を私に習えば良いと言っていたが、そんな必要は全く無いと思うほどに、彼女の心は守られていた。

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