「花子さん」

そう言って口付けをしてきた昴さんはやけに酒臭かった。いつものことながら酔っ払っている。こういう時は大概体を求めてくると知っている私は大人しく彼の腕に収まる。

「私は情け無い男ですね・・・。ここ最近あなたに性的なスキンシップをはかる事はありましたが、最後まではなかなかしていなかったので、少し我慢の限界が来てしまいました」

ぽつりと呟いた昴さんは今日はやけにしおらしい。珍しいなと思いながらも彼の胸に頬を寄せると、ドッドッと胸の内側から叩くような心臓の鼓動が聞こえた。

「アルコールでドーピングしないと素直にあなたを求める事が出来ないのも、また情け無いです」

あまりにも悲壮感が漂っていたので、私は少しだけ背伸びをして唇を寄せ、口付けを求めた。
別に哀れに思ったわけではない。私のほうこそ、最近焦らしに焦らされていつでも受け入れる準備は出来ているのだ。なんだったらそう言うプレイなのかしらと思っていたところだ。
昴さんはあんな事を言っていたけど、素直に求められないって言うわけではなくて、私を気遣って求めなかったと言う方が正しいと思ってる。本人は気付いていないのかもしれないけど、ここ最近私は考えることが多くて精神的にも少し参っていた。そこに肉体的疲労を追加しないように、と彼は気遣っていてくれたのだ。しかも無意識に。そうでなきゃ所構わず私を求めてくるような人がそんなしおらしくなっちゃうなんてありえないでしょうが。
私のおねだりを汲み取ってくれた昴さんは、私を抱きかかえて場所を移動する。
寝室に入って優しく私をベッドに寝かせると、慣れた手つきで服を脱がせた。あっという間に一糸纏わぬ姿になる。昴さんも自分の服を脱ぐと、サイドボードに置いてあったボディーミルクを手に取って蓋を開けた。

「・・・?・・・!!!」

昴さんは何も言わずに中身を私の体の上に垂らす。冷たいそれが突然体にかけられて思わず肩が跳ねた。ボディーミルクは鎖骨辺りから、まるでパンケーキにチョコレートソースをかけるようにお腹の下までかけられた。
そして昴さんはお腹の辺りから馴染ませるようになでていく。ぬるぬるとした感覚がもどかしい。そのまま徐々に上に上がってきて、とうとう胸にまで到達すると、私は急いで口に手を当てた。「ンッ!?」ぬるっとした昴さんの手が胸を揉みしだく。つるっと指が乳首を滑れば、私は腰を浮かして喘いだ。石鹸でぬるぬるしている感覚に似ている。私の反応を見て気を良くした昴さんは、執拗に乳首を攻めた。

「あっ、んんん・・・ふ、ぁ、あん」

「そんなにいいんですか?固くなってますよ、ここ」

「んんぁあ!や・・・よすぎる・・・!」

指の腹で優しく撫でられているだけなのに潤滑剤のおかげで滑りが良く、いつもと感覚が違う所為で快楽の生まれ方も違う。あっという間に秘所はとろとろになって、私の返答を聞いた昴さんはにこりと笑った。ボディーミルクが完全に体に馴染んだろことで、昴さんは私の股に手を伸ばす。溢れかえった蜜壷に指を押し当てられると、なんの抵抗も無くそこは指を飲み込んでしまった。

「はぁ・・・ん!」

「すごいですね・・・」

昴さんは指を増やしてかき混ぜる。さっきのボディーミルクのせいだろうか、いつもよりぬるりとした感覚がやけに扇情的で、私はもう余計な事を考えられない。ただでさえ焦らされ続けてきたのだ。本当にこの男、策士というか何というか。

「ひぁっ・・・あああっ」

押し寄せてきた快楽の波に飲まれて、声を上げる。目の前が真っ白になって、大きく息を吐く。イってしまった。昴さんは愛液にまみれた指で私の太腿を撫でた。収めるものが無くなった秘所がひくひくと収めるものを欲しがっている。

「すみません。あまり余裕が無いんです」

昴さんはそれだけ言うと、私の右手を握って、もう片方の腕を背中に回して思いっきりそれを突きたてた。

「っー!!!」

息が詰まって、私は昴さんの手を強く握り締めた。ぎゅうぎゅうと締め付けるそこがあまりにも必死に昴さんのその形を把握しようとしている。昴さんは本当に余裕が無い様子で、大きく息を吐いていた。「花子さん・・・もう少し力を抜いて・・・」そんな事言われても。

「動きますよ」

余裕が無いとは言っても、ちゃんと事前に宣告してくれる辺りが彼らしい。心の準備をしてぎゅうと目を瞑ると、思ったよりも激しく昴さんが動いたために私は慌てて喘いだ。

「あっ!?あ!・・・ん!や、まっ・・・て!」

「さっきも言ったでしょう。あまり余裕が無いんです」

喘ぐ私とは間逆のように昴さんの声は冷静だ。しかし余裕が無いのも事実なのだろう。会話よりも快楽に気をとられている。そんなにされると私はもっともっと余裕が無くなってしまう。
なるべく声を抑えようと意識はするが、意識すればするほど快楽が強くなる。ああ、もうだめ。そう思った時には絶頂の第二波が押し寄せてきたのだった。



まどろみの中、隣にあるぬくもりに安心して、私は寄り添った。好きよ、愛してる。他の人なんて目に入ってはいないから安心してね・・・。力強い腕に抱きしめられて、私はまた幸せを噛みしめた。出来ればこの関係がずっと続けばいいのに。



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