隣の棟でも状況はひどい有様だった。
こちらでは看守たちが先頭に立って瓦礫の撤去作業をしていたおかげで楽に入る事が出来た。入ってきた私を見つけた看守が駆け寄ってきて、現状を教えてくれた。私が医者だと知っているからだった。

「隣の棟はどうですか」

「あっちはもう大丈夫。出口までの道のりはそんなに遠くないのでしょう?すぐに避難できると思うわ」

「そうですか。ではこちらについてきてください。怪我人がたくさんいるんです」

どうやら私の情報は全職員に連絡が行き渡っているようで、見つけたら頼る事になっているらしかった。なるほど。あの看守が言っていた助力とは人間一人一人とかではなく、この監獄全体の事なのだった。本来なら一人の治療いくらで換算するものが、ここ全体を1ロットとして換算するつもりだ。出来るだけ大きい報酬を貰わなければ割には合わない。

「動ける人は全員瓦礫撤去を?」

「はい。怪我人は全員救助済みと聞いています。自分は救護係としてここに残っていますが、他は出払ってます。・・・ここです」

そう言った看守に促されて部屋に入ると、その光景にぞっとした。怪我人は30名程度であったが、この狭い部屋の中に所狭しと横たわっていた。程度の良し悪し関係なく皆平等に、だ。

「・・・まずは今すぐに治療が必要な方とそうでない方とを分けてください。やけどが酷い方はここでは治療が出来ないために診察・処置は出来ません」

看守は私の指示に従って一人一人に声をかけて様子を見ている。中には意識が無い人もいて、そういう人は私が診察をして適切な処置をした。
そして軽症者の手当てを看守に任せて、私は重傷者の治療をして回る。疲労困憊で処置を終えると、ふと気になっていた事を思い出した。

「本当にこれで全員ですか?」

「ええ・・・そう聞いていますが」

さっきまでいた棟とは随分怪我人の様子や人数が違う。死亡者が大勢出るくらいに爆破されたのだとしたら、軽症者の数の方がずいぶん多いのが気がかりだった。

「・・・他に怪我人がいないか見てきます」

まだ生きていて取り残されている人がいるかもしれない。そういう人こそ、私みたいな人が必要だったりするのだ。ここに居る人たちはほぼ命に別状は無いだろう。兎にも角にも、ここを出てちゃんとしたところで手術しなければならないのだから、もう最善は尽くしたつもりだ。
看守は私に付き添いが必要かと聞いてきたが、それよりもここにいてもしもの時のために動いて欲しい。私が最初に居た棟に看護経験がある人がいるから、何かあればそっちに頼ってくれと言うと、私はまた移動した。



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