「・・・・・・・・・」

ばっと言う効果音がつきそうな勢いで、クロオさんは私から体を離した。ぽかんと呆気にとられた顔をしたまま、クロオさんは私の顔を覗き込んでいる。私の真っ赤になった目を見つめているうちに、くつくつとクロオさんは笑い出した。

「ハハハ・・・。そうか、そうか・・・・・・。何か可笑しいと思っていたんだ。そう言うことだったのか」

一人で納得しながら笑っているクロオさんに、今度は私の方がぽかんという顔をする番になった。

「きみと微妙に会話が噛み合わないのが不自然で、なんでだと思っていたんだ。そうか、きみは自分が死んだと思っていたんだな?」

「・・・は?」

「花子。きみは死んでなんかない。なんせこの私が手術したんだからな。死なせはしないさ・・・。聞いたことないか?ブラック・ジャックという闇医者の話を!」

ブラックジャック・・・!黒男・・・!?ハッとして彼の目を見つめ返す。
そう言えば私が住んでいる町にそんな名前の闇医者がいるという噂を聞いたことがあった。法外な手術料を取るが腕の良さは右に出る者がいないほどと噂される外科医。・・・それじゃあ私は本当に生きてる・・・!?あっ、「じゃあもしかしてここは私の住む町!?」「ああそうだ。もう日常生活に支障は無さそうだし、お望みとあらば今からでも家に帰れるんだぜ」クロオさんは皮肉を言うみたいにそう言ったけど、私はその発言の裏を探った。

「無理ですクロオさん。私は既に別の病を抱えていますから。治してもらうまで帰れません」

裏手を取られて口ごもったクロオさんは、何かを諦めたようにふっと息を吐いた。

「・・・いいのかい、私は高いよ?」

それでも構わない。ブラックジャックのお噂はよーく聞いている。それが1千万でも1億でも払おうじゃないか。呆れ顔のクロオさんに、私は挑戦的な笑みを見せつける。「払います」私の挑戦を受けたクロオさんも同じような笑みを見せて「そうだな」と口を開いた。

「そうだな、それじゃあ治療費は前の手術代込みで、きみの人生を貰おうか」

どうせ私の病は死ぬまで治らない。目を閉じて口付けを強請ると、柔らかいものが唇に押し当てられて私の胸は高鳴った。
そして私は自分の人生を放棄した。ずっと欲しかった愛に溺れて、溺死したのだ。
唇を離してお互い見つめあう。クロオさんの瞳はキラキラと輝いていて、私は銀河の星屑になったような気がした。


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