「ん・・・んむむ、やめ、痛い、いたたたた」

ニャースに頬を舐められた痛さに目を覚ました。猫の舌ってなんであんな紙やすりみたいなんだろうか・・・。どうやらニャースたちはお腹がすいたようだ。全く、こんな朝早くから起こすなんて・・・。

「わかった、わかったよ起きるよ・・・」

むくりと上半身を起こすと、ニャースたちは自分の餌入れの前に座って待機した。まったく、もう・・・。ポケモンフーズを取りに行こうと立ち上がると、向かい側のソファにクチナシが寝ているのが目に付いた。な、何でこの人ここで寝てるの・・・。まじまじと観察してみると、目の下にはうっすらと隈が出来ており、顔色は青白い。どこからどう見ても不健康だ。このアローラに住んでいて不健康だなんて、とんでもない奴だ。見ていろ今日から太るくらいカロリーを摂取させてやるんだから。(一食だけだけれど。)とりあえずぱしゃりと携帯端末で写真を取り、私はクチナシ健康管理日記をつけることに決めた。写真なんて滅多に取れるものではないだろうから、今のうちに、ね。

「さあニャースたち、朝ごはんだよ」

そう囁いてポケモンフーズを入れてやると、ニャースたちは喉を鳴らして食事を始める。あまりにも美味しそうに食べるので私もお腹がすいてきた。私たちの朝ご飯を用意しなくては。

「冷蔵庫の中身はっと・・・あら・・・全然入ってない・・・」

有り合わせで何が出来るか目一杯時間を使って考え、何とか冷蔵庫のものを全部綺麗に使い切って朝食を作り上げた。そして未だに寝ているクチナシを起こしに行く。

「クチナシさん、おはようございます。ご飯出来てますよ」

声をかけたが目を覚まさないので、肩に軽く手を置いてもう一度同じ言葉を繰り返す。

「ああ・・・花子か。おはよう」

おはようと言ってからまた目を閉じたので、とりあえずコーヒーを入れることにした。何度寝のつもりだコラ。

「クチナシさん、朝ごはん出来てますから食べてください。いくら通勤時間0分と言ってもですね・・・」

コーヒーをテーブルに置いて、もう一度クチナシの肩に手を置くと、なんとその手を掴まれて引き込まれてしまったのだった。
クチナシの胸に顔を埋めたまま頭を撫でられる。クチナシがいつも首にかけているZクリスタルが頬に当たって痛いし体勢も痛い。

「ちょ、ちょっとちょっと、痛いですって」

私が慌ててクチナシの腹を叩くと、何事かといわんばかりに(漸く)目を覚ましたクチナシは状況を確認すると慌てて私を放した。

「ああ、すまないね。いつもの癖で」

いつもの癖だと・・・?どういうことだ・・・。
あらぬ妄想が繰り広げられそうだった脳内に警鐘を鳴らして、私はテーブルの上のコーヒーを指差した。

「も・・・もう・・・、いつも寝起きは良くないほうですか?とりあえずコーヒー飲んでください」

「低血圧なもんでね。・・・ああ、ありがとう・・・」

「それは大変だ。朝ごはん沢山用意していますから、残さず食べてくださいね」

「残さず?・・・それはどうかな」

「残したら罰金ですからね!」

「・・・・・・」



「やー、やればできるじゃないですか」

「しかしちょっと作りすぎだろう・・・」

「中途半端に食材が残ってしまうので、全部使い切りましたからね」

「ぜ、全部だと・・・」

食後のコーヒーを断ったクチナシが、お腹を押さえてソファに項垂れる。綺麗に食べ切られたおかげで食器は全て綺麗だ。私は後片付けをしながら、クチナシに声をかける。

「今日は外に出るんですか?」

「そうだな。・・・しかし、これじゃあ動けん・・・。昼前には出かけてまずは食材を買い足しに行かないといけないだろう。買出しが終わったら見回りに行くから、まずは昼前になったら起こしてくれ・・・。少し・・・寝る・・・」

「わ、わあここで?!」

慌てて振り返ったが返事はない。どうやらその気力さえ無い様だった。返事もせず、ピクリともせず深く呼吸を繰り返している。今ニャースがクチナシの腹の上に乗っかれば、100%酷い事になるだろう。私は溜息を吐いてライドギアを操作した。


「カイリキー、こっちよ」

「セイヤ!」

「静かにね」

「セイヤ・・・」

クチナシを横抱きにしたカイリキーを引き連れて、私は地下にあるクチナシの自室へと来ていた。
そう言えばお気に入りのベッドがあると言っていた。どんなベッドなのか楽しみだ。

「さあ入って」

カイリキーを部屋に入れてから自分も入る。
クチナシの自室は思った以上に物がなかった。チェストが一つと読み物机が一つ、椅子が一つ、ランプが一つ、そしてわりと大きめのベッドが一つ。ベッドのシーツには皺一つない。本当にここで寝ているのか不思議なくらいだ。
カイリキーを促してクチナシをベッドに寝かせる。う・・・うわあ思った以上にふかふかのベッドじゃないか・・・!

「カイリキー、ご苦労様」

にこやかに礼を言うと、マッスルポーズをしたカイリキーは静かに帰って行った。静かにしてねという言いつけを守っているようだ。お利口さんで何より。

・・・さて、と私はクチナシの寝顔を覗き見る。
食後だから顔色は良い。こうやって睡眠時間を強制的に作ってやれば、そのうちこの隈も亡くなるだろうか。
あまりにもすやすやと眠っているのでこちらまで眠くなってくるが、だめだめ、やる事はたくさんある。クチナシを起こさないように静かに部屋を出ると、残り3時間弱でどこまでの事が出来るか考えた。


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