ポータウンはいつも雨が降っている。
私はスカル団に所属している友達に頼まれて食料を配達しに、よくこのいかがわしき屋敷に通っていた。
スカル団の連中は、実は根からの悪い奴らばかりじゃない。出入り口付近に居る団員は私の姿を見つけると、まるでイワンコが尻尾を振るように手を振りながら駆け寄ってくる。「ああ花子さん、こんにちはっす!今日は配達の日でしたよね。たまには違う日にも来たら良いのに」私が何故この子達に好かれているのかは分からない。けれど、このスカル団で私の事を嫌っているのはグズマ以外には居ないだろう。
私は団員の案内で屋敷の厨房まで食料を届けた。誰が料理をしているのだろうか、毎週厨房のテーブルの上には次の注文が書かれたメモが置いてある。癖の無い綺麗な文字で、野菜や肉、魚、おいしいみずやエネココア、それとたまに洗剤やティッシュなどの生活用品が書かれており、そのメモと一緒にその分の代金が置いてある。私は代金を確認してメモに書き込むと、今週の分の過不足を団員に報告して余った分を手渡す。(大体は多めに置いておいてくれるので余る)私への手数料として毎回五千円。隣町まで配達するだけでこれくらい稼げるのなら、良い小遣い稼ぎと言えるだろう。買出しの連絡は週に一回。月に約2万の稼ぎだ。
・・・私のお財布事情をこれ以上語っても仕方がないか。
配達を終えると、案内してくれた団員に誘われてお茶をしていくのが恒例だ。
たどたどしい手つきでロズレイティーを入れてくれる姿を眺めるのはなかなか悪くない。微笑ましい気持ちになる。彼らだって普通の人なのだ。
そうして屋敷を出て家に帰る。やはりポータウンにだけ雨が降っているのか、マリエに入る頃には雨はすっかり止んでいた。

そんな日には必ず私は外食をする。(定期的だが)臨時収入が入ると、どうしてもちょっとだけ贅沢したくなるのだ。
ローリングドリーマーに入ると、いつもの外国人カラテオウが「ヨクゾマイラレタ」と声をかけてくる。一名です、と言うと、困り顔をした彼が「申シ訳ナイガ、タダイマ満席ナリ。シカシ相席ナラ」と言う。またか。
マリエでも指折りの人気店。仕方ないか。「お願いします」と声をかければ案内される。
その席に座っているのはいつも同じ人。

「ああ、ねえちゃんか」

「どうもこんばんは。またお会いしましたね」

いつ見ても、その深紅の瞳に吸い込まれそうな気持ちになる。私はそっと目を離して席に着いた。

「雨の匂いがするな」

「そうですか・・・。もしかしたら明日は雨なのかもしれませんね」

「そうかもな」

彼はクックと喉を鳴らして笑うと、面白そうな顔をして私の顔を見る。何が面白いんだか。
普段なら、他の人なら不快に思うのだろうが、何故だか不愉快な気持ちにはならない。だから私は毎回この人との相席と分かっていても、この椅子に座ってしまうのだ。

「・・・・・・、いつ食べてもここの料理は美味い」

「そうですね」

彼が食べているのはオチムシャだが・・・。それは大人の味と言う奴なのだろうか・・・。成人してから幾年もたっている私は未だに子供舌で、なかなかオチムシャには手が出せずに居る。それを知ってか知らずか、たまに彼は「特にこれが美味い。一口食べてみるか」と綺麗な箸使いで私の口元に料理を向ける。最初は戸惑ったが、別に知らない人と言うわけでも無いし、店の料理に何か盛られているとは考えられない。じきに慣れた私は、特に考えもせず口をあけるようになった。そしていつも同じ観想を言うのだ。「・・・ほんとう、ですね」お世辞は苦手だ。彼はやはり私の本心を知っている。面白そうに笑うと、また食事を再開した。ただの嫌がらせなのだろう。・・・・・・しかし、美味しそうに食事をしているのもまた事実だ。そんなに美味しいのなら、たまには食べてみても良いかもしれない。


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