「・・・・・・ん、」

急に意識が覚醒して、私は目を開いた。アラームがなっているわけではない。自然と目が覚めたのだと思うといい気分のような、悪い気分のような、そんなどっちつかずの感覚に囚われる。時計を確認すればルーチンよりも10分早かった。ああ・・・二度寝したいような気がしてきた。そんな誘惑を振り払うように頭を振って、体を起こした。よし、これでもう寝られないぞ・・・!
スマートフォンのアラームを止めておいて、とりあえず顔を洗って着替えるかなと目を擦りながら部屋を出ると、香ばしいコーヒーの香りが・・・って、え?

「おはよう」

「お、はよう・・・ございます・・・?」

うっそこれまだ夢だったの?夢の中で起きただけ?それじゃあアラームを止めたということは現実ではもう起床時間?やだやだ寝坊してるじゃない私早く起きろ!
頭の中でパニックに陥っている私に、降谷さんは「早く顔を洗っておいで」とお母さんみたいな事を言ってきた。とりあえず頬を抓った。痛い。おいこらちょっとまて何平然とした顔でお母さんやってるんだお前は。
頬を抓った私を見て、降谷さんは無言で近寄ってきて反対側の頬を抓った。「いひゃひゃひゃひゃ!」奇声を発した私を満足そうに見た降谷さんはそのまま元の場所に戻って優雅に新聞なぞ読みながらコーヒーキメてやがって心底腹立った。箪笥の角に足の小指ぶつければいいのに・・・!!
ひりひりと熱を持った頬を冷やすためにも、まずは顔を洗いに行こう。話はそれからだ。


「あああの」冷蔵庫から卵を取り出しながら私はおずおずと口を開いた。降谷さんが振り返った気配は無く、「何」と短い返事を頂いた。どうやらニュースを見るのに忙しいらしい。

「私戸締りはきちんとしていた筈なんですが・・・」

「ああ、俺はちゃんと玄関から入ったけど」

「いえそういう問題ではなくてですね」

駄目だ話にならない。もしかしたら万が一にでも玄関の鍵を閉め忘れたのかもしれない。今夜はきちんと鍵を閉めた事を確認して寝る事にしようと決めて、私は朝食のメニューを考えた。もう降谷さん待ってるし、簡単なのにしよう…。メインにベーコンエッグと、昨日の残りの味噌汁を温めてご飯と・・・あ、漬物があるからそれで良いか。



そして夜。
いつものように降谷さんを玄関まで見送って、隣の部屋のドアが閉まる音を聞き届けてから玄関の鍵を閉めた。
・・・よし、これでいい。あとは窓の戸締りを確認してっと。…さて寝ようかな。

翌朝にまた今朝と同じ内容が繰り返される事を知らない私は、間抜けにも穏やかに眠りに着いたのだった。




「あれ?降谷さんどうやってむぐっ」

「この間学習したと思ったんだけどな。どうやら俺の勘違いだったらしい」

「んんん!!!」


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