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「桐生夏緒だな?」


私は慎重に頷くと視線の先の小さな赤ちゃんと彼に肩を貸す沢田くん、そして何かと有名コンビの山本くんと獄寺くんを盗み見た。

クラスこそ違えど沢田くんを中心として展開される「マフィアごっこ」は学校中で有名だ。私ももちろん、誰もがくだらない男子の子供じみた遊びと認識してたけど、


(本物……)


額の感触は紛れも無い実銃だ。一体同級生に狙われる理由、あっただろうか。同級生じゃなかったとしても最近は狙われるような理由すら皆無の衰退ぶりをみせていた我が組が情けなくて涙が出そうだ。

それより疑問なのは、なぜ同級生が銃を持っているのかということだ。不良の獄寺くんならまだしも、このダメツナと有名な沢田くんがどうして。


「この状況で考え事とは余裕じゃねーか。お前、女であることに感謝するんだな。男だったら今頃あの世行きだぜ」
「え? ああ、すみません。逃げないんで銃口下ろしてくれません……? てゆーか沢田くん? 助けて」
「ほんッとごめんね桐生さん! 話したこともないのにこんなことになって。リボーンもやめろよ!」


平謝りの沢田くんを無視して赤ちゃん……リボーンくんは銃口をさらに突き付けてきた。ああ、殺されるのかな、いや、ないだろうけどもう諦めスイッチオンにしようかな。


「任侠一家桐生組長女、桐生夏緒」
「はい?」


ここで聞き返したのは私じゃない。沢田くんだ。真ん丸としたかわいい目が信じられないといった様子で私を凝視する。


「えーっと、任侠一家って、つまり、」
「……世に言う極道……まぁ平たくいえばヤーちゃんです。あまり知られたくなかったのですが……」


ため息が漏れた。とは言え世の中情報は常に更新され歩き回るものだ。いずれクラスメートにもばれるだろうと思っていたけど、時の流れに任せておけばそれを知ってもたいていは触れずに今まで通りの付き合いができたものを。まさかこんなに早く、しかも赤ん坊が正面切ってくるとは。







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