君の為に命を懸けて





事件の一報を受けて来た警察による、事情聴取等が続いている体育館。


私も蘭と共に舞台関係者として立ち会うなか、現場には何故か新一の変装をした平次が来ていて。


私や和葉さんにすぐにバレて、警部や毛利探偵に怒鳴られガックリと肩を落としてたんだけど…。


「雛、すぐに俺が事件解決したるからなっ」


「うん、えっと…頑張ってね??」


「おうっ♪」


「???」


と話し終えた平次は、何故か意気揚々と現場に戻っていった。




(…新一と平次が居れば、きっとすぐ解決するよね)


落ち着かなくて、きゅ、と手のひらを握り締める。



(快斗たちはどうしたかな…)



推理の話だろうか…平次がコナンに話し掛けているのが目に入ったが、当の本人は興味無さそうに歩いていってしまった。


(??? なんか今日の新一、変…?)





* * *





事情聴取や捜査が進んだ後、雨に濡れて帰ってきた高木刑事の報告を受けた目暮警部が、事件性の無いことを確認して「これより我々は、本件を自殺として…」と言いかけた時だった。


「待ってください、目暮警部」


黒衣の騎士が、稲光と共に体育館の入り口から歩いてくる。


「これは自殺じゃありません。極めて単純かつ初歩的な、殺人です」



「き、君は一体…」


「お久しぶりです、目暮警部。工藤新一です」


「ぇ、新一…?」


(だって新一はここに…)


すぐ傍に立つコナンに目を向けるが、当人はマスクと眼鏡を付けたまま静かに新一を見ている。



「ホントに、新一なの?」


騒ぎ出した学生たちの歓声を止める彼に、蘭が一歩前へ踏み出した。


「あ?バーロー、寝ぼけたこと言ってんじゃねぇよ」


呆れ顔で蘭にそう返す新一が、蘭の隣に立つ雛に近づいてきてその耳元に顔を寄せる。


「新…、?」


「あとで大事な話があっから…逃げんじゃねぇぞ、雛///」


(…確かに新一だ…じゃぁ、そこに居るコナンは…?)


「だけどその前に、」と握り締めていた両手に、新一の手がそっと重なる。


「オメー、雨に濡れないようにしてちょっと外の空気吸ってこい。事件の方は蘭に付き合ってもらうから」


「ぇ…?」


「死体見るの初めてで怖がってただろ。…我慢してるのがバレバレなんだよ」


「ぁ…」


「あぁそれと服部、オメー10円玉持ってねぇか?」


「は?そりゃ一つや二つやったら持ってるけど、そんなもん何に使…、ははーん、そういうことか」


「なっ、ちょっと貸してくんねぇか」


「えぇけど、高いで? いきなり現れて美味しいとこ持っていきよって」


「すぐ返すって;」



(…探偵ってホント、何でもお見通しなのかな)



隣でその様子を見守っていた蘭にも促されて、私は有難くその場から離れさせてもらった。





* * *







アイツに手を重ねられ、促されて体育館を出て行く雛の姿を遠くから確認した俺は、母さんや青子を残して彼女を探しに来ていた。



(あ゙〜っ、面白くねぇ! てか、なんなんだよ工藤は!? なんか耳打ちもされてたし!)


イライラと嫉妬が渦巻くのを抑えようともしない快斗が体育館横の通路を曲がると、人の通る気配が無さそうな静かな場所に雛の姿があった。


どうやら緊張の糸が途切れたようで、ふぅ、と一息吐いて雨空を見上げている。



──解ってんだ。
工藤が指摘した通りに無理してたこと。
部外者だから割って入って行くことも出来なかったが…。



(─ったく。そんな可愛いとこ、他のヤローに見せてんじゃねぇよ…)



今、あの場に現れた工藤のことを問い詰めるのは得策じゃないと判断した俺は、同じように一息吐いて気持ちを鎮めてから雛に近づいた。




「─雛、」


「ぇ?」


ポンッ


振り返った彼女の目の前出差し出した手のひらの上に、ふわりと可愛い花々が現れる。


「快斗…びっくりした…」


「だろ?」


ニッと笑ってマジックで出した、その淡い紫色の小さな花々をティアラの縁辺りに飾ってやる。


「ん、可愛い。……ぁ、いや、付けなくても──っ、////」



零れた言葉に思わず慌てるが、そんな俺にくすりと笑った雛が頬を染めて「ありがとう」と返す。


「せっかくだから、このまま舞台に立てば良かったな〜」


「いーんだよ、勿体ないだろ///」


「?? …そっか、生花だもんね」


「いや…そうじゃなくてだな…;」



(着飾ってる姿なんか余計に表に出せるか;)


「雛姉ちゃん」


二人の会話を遮るように、後ろから呼びかけられた。


「コナン…くん?」


「ちょっと大変なことになっちゃったんだけど…一緒に来れる?」


「ぁ、うん…快斗ごめんね、行かなきゃ」


「おう、その辺回ってるから連絡しろよ? 母さんと青子がカメラ片手に待ってっからさ」


「ふふ、解った。じゃぁ後でね」


踵を返す雛の隣で、マスク姿の少年がちらりと快斗を見てから同じように彼女の後に続いて歩きだす。


一方の快斗も、少年の姿からじっと目を逸らさなかった。



「…誰だ、あいつ」





 69 

戻る




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -