ホントの俺で、君に






新一は事件解決をしながらも、胸の痛みに耐えていた。



(酷い痛みだ…いや、元に戻った反動なのか…っ、…でもこれで…ようやく、雛に……)



蘭が慌てて医者を呼びに行ったため、部屋には服部と二人で話していた。



「…推理に勝ったも負けたも…上も下もねぇよ。…だってよ、真実はいつもたったひとつしかねぇんだからな…」


そらそうや、と服部が言葉を返しながら話しを続けている。




身体がツラい…。


酷く咳き込みながら、苦しさの増す自分の胸元を掴んだ。



(──っ!! やべぇ…、また心臓が…っ)




「…それより、雛に変なちょっかい出すな…よな………っ、」


今のうちに釘をさしておかなければ、と声を絞り出すが、「それとこれとは話が別や」と一蹴される。




「なんやねん、いきなり…。ええやんか。付き合うてへんねやろ?………って、工藤??」



こちらを振り向いた服部が心配して寄ってきた。
明らかに只の風邪のようには見えないだろうが、今はそんな余裕はない。



苦しみが激しく襲ってくる。


冷や汗が出ているのに、煙が出そうな程身体が熱くなっていく。
胸の痛みが、わずかに心の奥に影を落とした。




(心臓が、熱い…っ、)




「おい、工藤っ!!」



「ぐあぁ…っ、」



(骨が…融けてるみてぇだ…っ)



なんとか足に力を入れ、ふらふらと部屋を出る。
服部が後ろから何か叫んでいた。




(まさか、俺…戻っちまうのか…。せっかく元の身体に戻れたのに…っ、また子供に、『コナン』に戻っちまうのかよ…っ!?)





心臓の痛みが増していく。
「新一っ?」と後ろから蘭に声をかけられ振り向いた。


「ら、蘭…;」


心配した蘭が近づいてくる。


正体がバレてしまっては…と思ったまま、薄れた意識のせいで階段から落ちてしまった。


「───、新一っ!」





──正体がばれないように、すぐさまトイレに駆け込んだ。



(頼む…まだ戻らないでくれ……せめて、雛に…、あいつのところに…っ!!)



その瞬間、張り裂けそうな胸が一際痛んだ。


「────っ!!、うあああぁっ!!!」














「ぇ?コナン君が倒れた??」雛は蘭からかかってきた電話の内容に驚いた。



夜も更けた頃で、ちょうど自室に戻ったところだった。


《そうなのよ、今は熱も下がってきたんだけど…。譫言で雛のこと呼んでたのよ? 懐かれてるのね》
ふふ、と電話口で蘭が笑う。



そんなんじゃないと思うけど、と心の中で思ったが何も言えず、乾いた笑いしか出なかった。



《それで新一が、事件解決してくれたんだけどね…あいつ酷い風邪のまま姿眩ましちゃって…っ!! まったく事件事件って、雛に会ってから行けば良いのに》



「ぇ…、新一!?」



《そうよ、コナン君が連絡したらしいんだけど……ちゃんと雛に心配かけないように、言い聞かせておくんだったわ…っ、》



「…………、」



(どういうこと?元に戻ったの??…でも、今はコナン君なんだよね……じゃぁ、倒れたのって…)



《どうしたの、雛? ……やっぱり新一に会いたかった?》



「ぇ?…もう、どうしてそうなるのよ…」



蘭の冗談を笑い飛ばすと、「もし良ければお見舞いに来てあげて?コナン君も喜ぶと思うから」と言われたので、二つ返事で了承した。



中身は新一なのだからそんなことはないと思うが……、元に戻ったという点が気になった。



(阿笠博士か私にしか、話せないだろうし…)


話しを聞いてあげるだけは出来るかもしれない、と思った。



「じゃぁ、コナン君によろしくね」と、話しをつけて、ニ、三語言葉を交わして蘭との電話を切った。



手のなかのそれに、思わず目を落とす。



「風邪の時くらい、素直に蘭に甘えたら良いのに…」



コナンではなく、自信に満ちた新一の顔が脳裏に浮かんだ。






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