「…て、……いと…」 俺を呼ぶ声がする。 「ん……、」 朝の眩しさを感じて、身を捩った。 ──まだ眠い。 温かい布団の中で、もう少し微睡んでいたい。 「…と、……かいと、?」 「…ぅ……ひな…、?」 「ん…快斗、起きて?」 「……、─────っ!!!////」 眼を開けると、ふわりと微笑む雛がいて、思わず飛び起きた。 首を傾げた彼女の、柔らかい髪が揺れる。 さっきの眠気なんて吹っ飛んでしまった。 「なっ…、雛……っ!?」 「おはよう、快斗」 制服姿で、ベッドの横に膝立ちになっている彼女が「学校、遅刻しちゃうよ?」と、可愛らしく微笑む。 一気に覚醒した身体中は、ドクドクと心臓のように煮えたぎるようだ。 「っ、////」 驚きのあまり壁際まで後退ってしまっていた快斗は、コクコクと頷くことしか出来ず、再度笑いかけた雛は部屋を出て行った。 (あー…、昨日キッドの仕事で寝んの遅かったからな…;) もちろん彼女に起こして貰えて嬉しい……が、不意打ち過ぎて言葉に詰まる程だった。 (心臓鷲掴みにされたかと思った……。反則だろ、あんなの…////) 愛しい彼女が自分を心配して、優しく起こしてくれるなんて。 (しかも、なんか甘い匂いがしたし…) 「あー……、////」 快斗は一人そのまま、力なくベッドに倒れたのだった。 身支度を整え、階下にあるリビングの扉を開けると、甘い香りが広がってきた。 テーブルの上に目をやると、こんがりと焼かれたフレンチトーストが置かれている。 (そういえば、昨日何かの液体とパンを手にしてるのを見たな…。さっきの甘い匂いはこれか…) それとは別に、サラダや果物が乗った皿もある。 (なんか…これ、…) 「快斗、まだ寝呆けてるの?」 仕上げに、雛が湯気のあがるマグカップを置くのをボーっと見ていたら、クスクスと笑われた。 食後に食べ終えた食器をシンクに片付けていると、彼女が弁当をテーブルに出してくれる。 「サンキュ、雛」 どう致しまして、と口の端を緩めた彼女を見ながら心の中で呟く。 (あー……幸せすぎんだけど…///) 戻る |