気付けたのは優しさの欠片





歩道を進む快斗の足は、自然と早くなっていった。



彼女たちとの待ち合わせ場所は、工藤邸からそんなに離れていないらしい、大通り近くの灯りがついたビルだ。



辺りはすっかり暗くなっていて、雛を一人で帰さなくて良かったと改めて思う。



「雛っ、」


快斗、と振り向いた彼女と一緒に居たのは、毛利さんと小学生くらいの少年だった。軽く挨拶を交わして、横に居る小さな少年を見遣る。



ジトリ、と俺を見返す少年の視線は不服そうで、心の隅で何かが引っかかった。



「ごめんなさい、米花町まで迎えに来てもらうだなんて…」と、雛が俺の傍に寄る。


少し目尻の下がった表情が可愛くて、俺の頬も自然と緩んだ。



「俺から来るって言ったんだから良いだろ? ──毛利さん、ここまで一緒に来てくれてサンキュな」



いえ、と言葉を返す毛利さんの笑顔はほんの少し固い。


それは俺が初対面に近いからか…あの幼なじみと雛に上手くいってほしいと思っているからか。




──しかし解せない。
工藤は、彼女が暗いなか帰ると解っていても、事件とやらに行ったのだろうか…。



雛に聞いてみたい気もしたが、恋敵の事を色々聞くだなんて、明らかな男の嫉妬を見せたくはない。
…最も、彼女がそれに気付くかどうかは別の話だが。






「じゃぁね、蘭…コナン君も」


「うん、また学校でね」と毛利さんも雛に笑顔を返す。




「雛…姉ちゃん、」



呼ばれた彼女が俺の隣で、少年にふわりと微笑む。



「またね」と少年の頭を一撫でした彼女を連れて、俺はようやく来た道を引き返した。













雛は帰路を歩きながら、迎えに来てくれた快斗をそっと見た。



自分とは反対の道路側。


先程から視界の端で、彼の手の動きに合わせて一本の傘が揺れている。




曇っていた空は雨も止み、月明かりが灯っていた。


降っていたのかな、とも思ったが…傘は濡れていないように見える。




「ん…、どうした?」



「ふふっ、なんでもない」



「……??」


(快斗はお父さんに似て紳士だなぁ…)






 21 

戻る




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -