もちろん、それは愛故に





机の下に隠れただけで蘭にあっさり見つけられてしまった新一は、名前を聞かれて壁際へ追い込まれてしまっていた。



「コナン…僕の名前は江戸川コナンだっ」咄嗟に本の背表紙にある名前を組み合わせる新一。



(『コナン』って…やっぱり中身は新一だなぁ…;)


雛は蘭の背後から、やれやれと息を付いた。




『新一は事件の為に出掛けた』と蘭に誤魔化したのはついさっきの事なのに、これでは気づかれるのも時間の問題なのではと思ってしまったのだ。



しかし、新一…いや、コナン君が此処には住む訳にはいかないし…と、二人を見ながら考える。




「…ねぇ、蘭。この子しばらく預かってあげてくれないかな? 博士のところじゃ爆発ばかりで危ないし、」


私も預かってあげられないから、と提案してみる。



博士も、探偵事務所ならと新一に耳打ちしているようだ。



「良いけど、お父さんに相談してみないと…。雛、このあとどうする?」



「んー、今日のところは帰るよ? コナン君のこともおじさんに頼んでみてほしいし」



「そう?…全く新一ったら、雛を放って事件に行くだなんて…なに考えてるのかしらっ」



そう言いながら蘭がトロピカルランドのお土産を手渡してくれた。



「ありがとう、…でもそれは蘭のことでしょ? デートの相手を置き去りにするなんて」



隣に立つ新一をジロリと見る。やべ!と慌てるコナン君が明らかに目線を逸らした。



「…はぁ、雛…。そんなこと言ったら新一泣くわよ!?」



「…ぇ?なんで私…?」



「鈍いわね、雛は…。
それより、一人で帰れるの? もう外暗いけど…」



「大丈夫だよ、そんな遠い距離じゃないでしょ?」



「だめよ…何かあったらどうするの! …そうだ、黒羽くんに迎えに来てもらったら?」



「ぇ……、快斗に…?」



「ら、蘭、姉ちゃんっ…それは…」


コナンが焦ったように口を挟む。



確かに空手をやっている蘭と違って雛は何かあった場合に対処しきれないだろう…。かと言ってわざわざ蘭が遠回りをして送っていくのも、雛が断るのは目に見えていた。




「そうよ!こんな時間なんだもの…雛を置いて事件に行くような、あんな推理バカはこの際放っておいて」



「ぇー……;」



(蘭!オメーどっちの味方だよっ!!)




有無を言わせず!といった感じの蘭に押されて、雛はやむを得ず電話をかける。




(でも…もし今頃、千影さんや青子ちゃんと晩御飯食べてたら邪魔しちゃうだろうし…)




予想外に、コール音が鳴って間もなく「はい、」と電話の相手の声がした。



「ぁ…もしもし、快斗?」



《あぁ、雛か? どうした?》



「いや、えっと……今から帰るから、一応連絡だけしてみたんだけど…」



何故か隣で蘭とコナン君がそれぞれ百面相してるけど、自分から「迎えに来てほしい」だなんて言えないし…。



とりあえず帰る連絡をすれば良いか、と思っていたらこんな言い回しになってしまった。



《ぁー……、工藤に送ってもらうのか?》



「? うぅん…新一は事件に行ってるから……一人で、帰るよ」




蘭にも快斗にも嘘は言ってない…と思う。実際に新一は小さくなってて居ないし(コナン君は居るけど)、これはこれで事件だもの。




《──だったら迎えに行くから、待ってろ》




「ぇ…っ、」




結果、目印になるような近くまで蘭やコナン君と一緒に行き、快斗と合流することになった。




(空手は出来なくても、私もみんなと同じ高校生なんだけどなぁ……もしかして一人で帰れないと思われてる?)




嬉しいことではあるが、「私一人ではそんなに心許ないのか」と少し複雑な気がした。






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