Allegretto 〜やや早く〜






学校の教室。


暖かい日差しが差し込んでいる。




生徒たちの前で紹介された雛は、席についても皆からの視線を一心に集めていた。




教師が「毛利さん、」と一人の女の子に声をかける。


解らないこととか教えてあげてね、と言われた彼女は「はいっ」と明るく返事をして雛に笑顔を向けた。











─休み時間─



「私、毛利蘭、よろしくね! ねぇ、雛って呼んでも良い?」


「うん…っ、じゃぁ私も蘭って呼ぶね」



蘭は新しい友達に嬉しくなって笑みを零した。



─ふわりとした、可愛らしい子だな。


みんなの前に立った時は緊張で固まっていたが、話しかけるとほっとしたように応えてくれた。




雛の隣に目を向け、幼なじみに声をかける。



「もぅ、新一! あんたもちゃんと面倒見てあげるのよ?隣の席なんだから」



席に着くときに挨拶は交わしていたみたいだが、窓際に座る彼は片肘をついてこっちを見ている。



「わぁってるよ……蘭が来る前だって、ちゃんと話してたし。 な、雛?」


「う、うん」



俺のことも呼び捨てで良いから、と言葉を続ける新一。



(って、何も言わずに呼び捨てにしてたんじゃない…雛も戸惑ってるし)



「もう、新一は勝手なんだから」



「なんだよ、蘭だって似たようなもんだったじゃねぇか」



いつの間にかよく解らない言い合いが始まって、雛にくすりと笑われてしまった。




「「……雛??」」




「ふふ…っ。ごめん、二人とも仲良いんだなぁと思って」



「「そんなことねぇよ(ないわよ)っ」」



声が重なると、雛はまたくすくすと笑った。


新一とは幼なじみなの、と説明する。



(雛って、笑うと可愛いなぁ)



ちらり、と新一を見ると赤くなった頬を隠すようにそっぽを向いている。



(珍しい、新一が照れた…? それとも……)



笑い声につられて、雛のことが気になっていた周りの子たちも集まってきた。






 *  *  *





新一は、緊張しながらも少しずつ打ち解ける雛に視線を戻す。



(なんか、蘭よりちっちゃくて小動物みたいだなー…)




その小柄な感じも、柔らかそうに揺れるブラウンの髪も、大人しそうなところも。


雛の隣にいる幼なじみとは違っていて。




時折笑顔を見せ始める、新しいクラスメート。




(…んだょ。なんか、心臓の音が早ぇ…///)





顔に集まった熱は、なかなか冷めなかった。







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