それはまるで戯曲のような
衝突-1/4

正直いうと、引っ越しは気が進まなかった。

友達もいるし、住み慣れた家を離れるのも嫌だし。
引越し先は田舎らしいし、何より……


何より、あの女がいる。


まぁ結局、俺がぶつくさ文句たれたところで決定事項だからどうしようもなかったんだけど。

なんだかんだ、引越しして正解だったかもしれない。

学校やバイトには割とすぐ馴染めた。
バイト先で気になる先輩もいて、毎日楽しいかも、なんてな。

あの女の家の近所に引越したものの、特に音沙汰なし。
どうやらこちらに干渉するつもりはないらしい。



そんなことを考えながら、どうにか眠たい朝礼をやり過ごす。
どうやら今日は俺の他に転校生が来みたいだ。

モロキン……――あ、諸岡 金四郎っていう先生ね。
俺たち生徒の間ではそういうあだ名で読んでる。――の嫌味たっぷりの紹介を受けた転校生が、
ドアを開けて入ってきた。

「鳴上悠です「貴様! 今窓際の女生徒に怪しげな視線を送っただろう!!」

転校生の自己紹介に、間髪入れずにモロキンが口を挟む。
あーあー……始まったよ……モロキンの転入生いびり。
かくいう俺も同じ目に合ったんだよね……。

ゲンナリとその様子を見ていると、遮るように
「せんせー、転入生の席ココでいいですかー?」
と、ショートカットの女子こと里中さんが挙手をする。

そういや俺の前にある席空いてたっけ。
なかなか夢から抜け出せない頭で考える。

モロキンに促され転校生が座り、やっとホームルームが始まった。

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