不思議な感覚だった。
フワフワしているような、でも、確実に落ちていく感覚。
真っ白な世界の先には――。
「痛っ」
尻もちをつく。
痛む場所を軽くさすりながら見回すと、そこは、異様な空間だった。
的の上に、殺人事件の検証現場のような、人型の線が引いてある床に、黄色の空、深い霧。
テレビのスタジオセットのように組まれている鉄骨たち。
「なんなの、ここ……」
里中さんが問う。
テレビから落ちてきたのだから、それは、きっと……。
「テレビの中……だろうな」
「とんでもないことサラッと言わないでよ!」
「…………」
夢でも見ているのだろうか。
「いや、この痛みが現実って証拠だな」
この世界が、現実?
「ケツが若干割れた」
「もともとだろう」
鳴上さんが、私の心のツッコミを言葉にしてくれた。
異様な空間にすっかり怯えきってしまった里中さんが、帰る帰ると騒ぎ出す。
帰ろうにも、上から降ってきた私達には、どこから出られるのかわからない。
周りを見渡しても、霧が濃くて何も見えない、が……
「……何か、聞こえる」
ピコピコと、子供が履く笛付きシューズのような音。
その音は段々と近づいてくる。里中さんが恐怖のあまり、私に抱きついてきた。
ちょっと役得……じゃなくて!
良くは見えないが、影が人型ではない。
こんな怪しい場所で、明らかに人の形を成していない何かって
「ば、ばけもの」
言うが早いか、私たちは走り出した。