それはまるで戯曲のような
逃走-1/2

不思議な感覚だった。
フワフワしているような、でも、確実に落ちていく感覚。

真っ白な世界の先には――。





「痛っ」

尻もちをつく。
痛む場所を軽くさすりながら見回すと、そこは、異様な空間だった。
的の上に、殺人事件の検証現場のような、人型の線が引いてある床に、黄色の空、深い霧。
テレビのスタジオセットのように組まれている鉄骨たち。

「なんなの、ここ……」

里中さんが問う。
テレビから落ちてきたのだから、それは、きっと……。
「テレビの中……だろうな」
「とんでもないことサラッと言わないでよ!」

「…………」

夢でも見ているのだろうか。

「いや、この痛みが現実って証拠だな」
この世界が、現実?

「ケツが若干割れた」

「もともとだろう」
鳴上さんが、私の心のツッコミを言葉にしてくれた。

異様な空間にすっかり怯えきってしまった里中さんが、帰る帰ると騒ぎ出す。
帰ろうにも、上から降ってきた私達には、どこから出られるのかわからない。

周りを見渡しても、霧が濃くて何も見えない、が……

「……何か、聞こえる」

ピコピコと、子供が履く笛付きシューズのような音。


その音は段々と近づいてくる。里中さんが恐怖のあまり、私に抱きついてきた。
ちょっと役得……じゃなくて!

良くは見えないが、影が人型ではない。

こんな怪しい場所で、明らかに人の形を成していない何かって
「ば、ばけもの」

言うが早いか、私たちは走り出した。

*前 | 次#
しおりを挟む
BACK
HOME
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -