それはまるで戯曲のような
逃走-2/2

どこに向かうのか、どこへ向かえばいいのか、
何もかもわからないまま、ただ敵性生物と思わしき影からひたすら逃げる。
走って、登って、降りて、また走って、気がつけばとある部屋にたどり着いた。

「なんだ……ここ……」

壁は、どこもかしこも、絵の具か何かをぶちまけたように色とりどり。
破かれたポスターが何枚か貼ってあるが、どれも同じポスターのようだ。
部屋の中央にはスカーフが、輪形にかけられていて、まるで……いや、やめよう。
とにかく、気味が悪い部屋には間違いない。

「あああああああ!!」
呆気にとられていると、思い出したように、陽介くんが叫ぶ。
「わぁあ! なになになに!!」
驚いた里中さんが私に抱きついてきた。役得……じゃなくて!

何事かと彼を見れば股間を押さえ、
「も、漏る〜〜〜!!」
とジタバタしている。
「モル? モルディブのこと? モルモット? モルタル?」
「ちっげーよ漏れそうなんだよ!」
ごめん。わかってて聞きました。さっきトイレ行きたがってたよね。
膀胱の限界が来たらしく、陽介くんは部屋の隅で、ズボンをカチャカチャといじり始める。

「ちょ、こんなとこでやめてよ!」

二人共コイツ止めないの!?って聞かれても、
「「え、なんで?」」
である。鳴上さんも同じことを思っていたらしく声が重なった。
いや、私的にはズボン濡らしたまま歩かれるよりかは、マシかなって思ったんだけど……。

私達の返答に唖然としている里中さんに対し、
「見られてっと出ねーだろぉ!」
と、外へ出るよう催促する。

「おめーは何覗こうとしてんだ!」
かくいう私は思惑がバレて頭を叩かれた。

「そうだよ架音ちゃん! 早く出よ!」
半ば引きずられるように外に出れば、先程見た影が。

里中さんは恐怖のあまり絶叫。
私はその声量にビビって絶叫。

声を聞きつけた鳴上さんたちが出てくると同時に、
影が、霧の中でも認識できるくらいまで近づいてきた。



なんということでしょう。愛らしい(?)熊さん(??)ではありませんか。

「な、なんだぁ……コレ……」
コレと言われたぬいぐるみ?は、キッとこちらを睨み、
「君らこそ誰クマ!」
と指……というか、手をさしてきた。


「しゃ、喋った!?」
すでに色々と有り得ないことが起きてるので、今更驚かないぞ。
というのも、里中さんがすごく怯えちゃってて逆に冷静になってきたのもある。

ぬいぐるみこと熊さんは気にせず続ける。
「クマはクマクマ! ずっとここにいるクマ!」

すごい、たった一言でゲシュタルト崩壊が起きた。


「森の熊さんならぬ、霧のクマさんか……フフッ」
「桜庭が壊れ始めた」
「どうしよう……雪子みたいになっちゃった……花村が架音ちゃんのこと叩くから……」
「なっ、俺のせいになんのかよぉ」
え、これ面白くなかったかな。結構いけたと思うんだけど。
雪子さん?とは友達になれそうな気がする。母に止められるだろうけども。

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