「こらー!名無子!!待つね!それ寄越せあるー!!」
『あはははは!欲しかったら追い付いてみなって!』
今、私は、耀の大好きなキ○ィちゃん人形を片手に街の中を走っているところ。
つまりは、まぁ、いじめ。
なんだか耀を見てると、いじめたくなるんだよね。
だから今日も、こうしていじめてるんだけど…
「…ま、待つ…ある……まっ………あ…、る……」
ヒィ、とか、フゥとか情けない声を出しながら、屋根の下からヨロヨロと追い掛けてくる。
このやり取りを始めてから一時間近くになる。
やがて耀は膝を手で抑え、息を整え始めた。
いじめる相手が追い掛けてこなかったら、意味がないので立ち止まって待つ。
「…はー…はぁっ……」
『平気?』
「………。」
こくりと頷く耀。
なんとか息を整えることが出来たらしい
そしてキッとこちらを睨み
「嫌いよ…お前なんか……名無子なんか、嫌いある!」
そう言われて
何故か一瞬、目の前が真っ暗になった。
石みたいに固まった私の所まで、耀はぽこぽこと怒りながら来る。
「…ったく!なんでお前は、いつもいつもそうやって我をからかうあるか!」
そんなの、私に言われたってわからない。
「罰としてキ○ィちゃん人形は、もらっていくあるからな」
別に私は欲しいわけじゃないから、勝手に持って行けばいいじゃない
じゃあ、なんで私はこんな物をわざわざ買ってきたの?
いやいやそれは、耀をいじめるためであって。
「…名無子?」
気が付くと、耀の顔が間近にあった。
顔が熱くなっていくのが、わかる
『わ…わわ、わ…』
「わ?何言ってるね」
『私が知るか馬鹿ー!!!』