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街に出た。ふらふらと歩いてる。特に用事もなく。Tシャツにズボンだけど、案外溶け込んでるみたい。あんまり目立たない。
しかしその中で私のことを凝視してくる人物がいた。知ってる。土方十四郎。鬼の副長さんだ。面識はないはずだけど。

「いやいやいやいやまさかそんな」

こっち見ながらブツブツ呟いてる。うーん、なんだろうか。逃げるべき?好奇心に従って近づいてみるべき?夢小説的に正しい行動としては話しかけてみることだろうか。なにそれ逆ハーチック。三角関係が始まって銀さんと土方がヒロインの取り合いを始める。ヒロインは現代からのトリップ者、私。アホか。
逆ハーは置いといて、とりあえず近づいてみることにした。ていうかそもそも今の段階で万事屋と真選組の関わりないし。

「な、な、なあ、お前…」
「はい?」
「うわ喋った!」

話しかける以前に話しかけられた。それにしてもうわ喋ったって。私のことなんだと思ってるんだろうか。なんか化け物にでも見えてる?なんでそんな挙動不審?
目線があちこちに動いて、ぶつぶつ呟いてる土方さん。なんでこんな昼間から、とか、疲れてるのかな仕事しすぎかな俺、とか、夢かこれは夢か夢なら早く覚めてくれ、とか。
…あれ?

銀さんと、土方さんの、共通点。
負けず嫌いなところ。味覚が異常なところ。喧嘩が強いところ。仲間に優しいところ。口が悪いところ。それから。きっとたくさんあるけど。二人だけの共通点が、もう一つ。

幽霊が、怖いこと。


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