蛇足話
バシンッと平手打ちが飛んだ。姉が妹を打ったのだ。
「コ、コロ……ス!」
――バシーン!
「殺す? 違うよねー、いたいよお姉ちゃん、は?」
「キサマ……シネ!!」
「は?」
――バシーン!!
「何いってるの、聞こえないよ? お姉ちゃんって可愛く言うまでやめないよ?」
妹は姉を殺そうと素早い動作で弾丸を繰り出した。姉はそれを盾をシールド型に展開することで難なくさけて、妹を殴りつける。一回、二回、三回、続く殴打に妹はやがて力をなくしていく。
「オノレ……エクソシストめめええエ」
すっと拳を掲げて見せた姉に、妹はびくりと肩をはねあげて、
「お、ネエチャン! オネエチャン!」
「……まだ、不細工だけど合格かな。早く人型に戻ってくれる? その球体だと間違って君を傷つけるかも――」
「もう十分イタイ」
「なにか?」
「いえ、ナニモ」
妹が姉に下った瞬間であった。すぅと音もなくアクマは人型戻ると、可愛らしい笑みをひきつらせてヒクヒクとさせた。
それをみた姉は笑みを深めると、ふいうちで妹に抱きついた。ぎゅっと無防備に抱きつく姉に、妹は今だったら難なく殺せるなと物騒なことを考えて片腕を鋭い刃に変化させる。そのまま突き刺そうとしたところで、姉が小さくつぶやいた。
「君だけは、私が守るから」
「……」
寸でのところで攻撃を止め、姉の表情を伺うが抱きつかれているためにみることが出来ない。妹は自分がなぜエクソシストを殺すことを躊躇ってしまったのか考えたが答えは不透明なまま。ゆっくりと腕をおろすと、人の手に変化させて姉をきゅっとだきしめた。
一瞬びくっと姉がふるえたが、安堵にもにたため息をついて妹にいいそえた。
「私のことを殺そうとするのはいいけど、時と場所は選んでね。たとえばエクソシストがおそってきた時なんかベストだよ」
「ハア……」
ばれている上に何を言い出すのだろう、この姉は。
「そういう時は私のことをさっきの物騒な獲物で刺してから、出来るだけ遠くに逃げるのよ。その時間は稼いであげる」
「ハァイ、オネエチャン」
分からないけど、姉の言うことは聞こう。妹が誓った日の話。
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