「や、ぁ……ん」


柳生のか細い声が耳に心地良い。乱れた髪をゆっくりと撫でて、俺は腰を送った。


「ふぁっ、ぁっ……」

「気持ち良いじゃろ、やーぎゅ?」


優しく囁けばそれすら感じてしまうらしく、柳生は身体を震わせた。その腕が俺の首に回されて、互いの身体がより密着する。

意外な事に、真面目でお堅い紳士殿はベッドの上では欲に忠実だった。

乱れる様が可愛くて、俺の理性まで飛びそうになる。


「にお、くん……ぁっ、もっと……」


柳生の瞳が、俺を正面から射抜く。

初めての快楽に戸惑いながらも俺を求める姿が可愛くて可愛くて――……










「仁王君。起きてください、仁王君」


遠くに聞こえる柳生の声。

ぼんやりとした頭のまま目を開けば、いつも通りの紳士殿がそこにいた。

乱れた面影など、どこにも無い。


「柳生……?」

「おはようございます、仁王君。よく眠られてましたね」


柔らかく微笑む柳生が、少し憎らしい。

夕べ「おやすみなさい」と言葉を交わした後、柳生はすぐに眠りについた。寝息が聞こえ始めるまでにさほど時間はかからんかったと思う。気持ちよさそうに眠っていた。

逆に俺は一睡もできず終いじゃ。隣に好きなヤツが寝とったら当然じゃろ。目を閉じて眠る無防備な姿に、何度手が出そうになったか分からない。

俺、頑張った。

ホント頑張ったぜよ。

そんな俺がまともな眠りについたのは、柳生が起きてから。寝ているふりをする俺を起こさないよう、柳生が静かにベッドから出てからだ。

意識が無くなったのは、それからすぐの事。柳生に起こされるまで爆睡してたってわけだ――あんなあからさまな夢を見ながら。


「もうお昼ですよ、仁王君」

「そうか……。すまんのぅ」

「お気になさらず。ほら、顔洗ってきてください」


笑みを残して出て行く柳生の背中を、ぼんやりと見つめる。

何というか……本当に眩しい笑顔じゃのぅ、紳士殿。その笑顔が、今は憎い。あんなに乱れとったくせに。いや、夢の中での話じゃけど。

仕方なしに身体を起こした俺の耳に、あっ、という柳生の声が聞こえた。

何事かとそちらを見れば、紳士様の極上の笑み。










「誕生日、おめでとうございます」









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