白のあいつが実は黒



「えー。ごほん。えー、…は、初めまして倉木茶紗です。好きなものは紅茶。嫌いなものはティータイムを邪魔するバカです。あ、でも私自身は割とバカな方ってかバカなのでその辺りはよろしゅうー」
「えー、倉木さんは先日までイタリアに居たそうだ、みんな仲良くしろよー。席は…沢田の横でいいか」

ちら、と噂の沢田くん…沢田綱吉を見ると、うん、向こうでの記憶よろしくダメツナっぷりが伺える。

素知らぬふりしてそこの席へと向かうと、痛いほどの視線がどこからか感じられた。
獄寺隼人だ。あの、変なタコヘッド。…いや別に…嫌いじゃないよ?

ガラッと学校の椅子特有の音を立てて座る。そして早速隣の噂の彼に話しかける。

「は、はじめまして、お隣、よろしくね」
「…うん、よ、よろしくね……。……で、君、何者なのかなぁ?」
「…へ?」
「俺の名前、……元々知ってたよね?」

雰囲気は柔らかいままだけど、私は変な違和感に襲われる。
…あっれ、ツナってこんなキャラだったんだっけか。どうもこっちに来てから原作の記憶が曖昧というかなんというか…。

「し、知らないよ、今はまだ知らないの、うん、知らない」
「…獄寺君のことも知ってたね?」
「ご、ゴクデラ?はて誰のことやら」
「…知ってたよねって言ってんだろ」
「ごめんなさい、知ってたんだと思います」

……返答が変になったのは私のせいじゃない、誰だこいつ、目の前のこいつ、誰だ。
え?家光が自慢してた沢田綱吉くん?んなバカな。私の知ってるツナっていうのはダメツナでダメツナで真っ白で可愛いんだ。
明らかな動揺を隠せない私は背中に冷や汗ダラダラだった。

いや、別に私がボンゴレの一員だとかそんなんをバレちゃいけないとからそんなんがあったわけじゃなくて。
違うんだけど、うん、そうだ。雰囲気ね、これ、あの、例えるなら、夢小説噂の黒ツナくんじゃないですかね。あぁ。笑顔が私の知ってる天使じゃない。黒い。

「クロツナくん?なんじゃそりゃ。」
「………おかしいなぁ。こんなはずじゃなかったんだけどなぁ」
「ちゃおっス。お前が茶紗だな、待ってたぞ」

……いつの間にか1限は自習になっていて、課題のプリントが配られていた。わけのわからない数字の羅列が載っていて、私はそれを諦めた。…と同時に、目の前におかれた状況も諦めたかった。

自習を知ってか、彼の家庭教師リボーンが姿を現した。こちらのほうには9代目から連絡がいっているようだ。……助かった。

「10代目ぇえ!…んだこの女10代目と馴れ馴れしくしやがって…」
「誤解だわ誤解。追い詰められてるんだけど、初対面なのに」
「初対面のくせに知ってる方が悪い」
「茶紗は9代目からの勅命を受けてツナのお守りをしにここにいるんだぞ」

いやいやいや。ちがうから!違うんだ、お守りて、いらないでしょう!なんだかとても逞しそうじゃないですかね!

心の中でダイレクトにつっこんだけど、これもきこえてるんだろうなぁ。プライバシーの侵害って知ってる?
相変わらず獄寺は睨むし。



「………っは。」
「お前放課後まで寝通したぞ、バカ?」
「…いやもう、疲れてたんだね、うんうん」

向こうの世界でも流石に昼休みとかは起きてたのに。
まさかの机突っ伏で放課後まで寝通すなんて。…お恥ずかしや。

すんごい呆れた視線が送られてる。痛い痛いそんな目でみないで私を。

「ははっ、転校生って面白いのな」
「何を笑ってんだ野球バカ。こんな得体の知れない女…」
「……ほら、早くいくぞ」
「…行くぞって、どこへ」
「俺んち」

…はい?ちょっと素でお伺いしたい。なにいってるのか、通訳読んできてー通訳。
放課後まで寝通したがために空の机の中にあらかじめ持ってきた教科書類を突っ込んで(人はこれを置き勉という)鞄を軽くしつつツナを見返す。

「それは喧嘩売ってんのかな…終いには殴んぞ。……リボーンに聞いたんだけど、うちで暮らすらしいじゃん」
「「な…」」
「10代目と一緒に暮らせるだなんてこんな得体の知れない女が!危ないですよ10代目!」
「獄寺くんうるさい。…まぁそういうことみたいだから。道わからないだろうから態々連れてってあげるんだよ?」
「あ、ありがとう」

純粋に感謝を返すと、ツナは驚いたように目を見開いた。元々大きい目が更に大きく。そして照れたかのように「別に」とぼそりとつぶやいて足早に教室を出ようとするので、私は慌てて後を追った。
おいていかれたら敵わん。


白のあいつが実は黒
(オセロなの?オセロ?)
(みんな向けはやっぱりダメツナだった…)

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