本日は見事な大雨。任務は無くなるのは当たり前だが、マーモンやルッスーリアとのティータイム、ベルやスクアーロとする鬼ごっこ(正確にはいたずらがばれた為の追いかけっこ)も出来やしない。
いや、鬼ごっこ(兼追いかけっこ)は屋敷内でも出来るのだが、なまえにとっては外に逃げられる方が何かと有利なのである。
『……暇だなぁ…。』
そしてこんなに大きな音を立てながら降られると、やる気も無くなる訳で。
『ベル、なんか面白いことしてよ。玉乗りとか。』
「は?なんで王子がそんなことしなくちゃいけないわけ。お前がやれよ。」
『いや、ベルがやるからこそ面白いんだよ。』
「ぜってーヤダ。」
談話室のソファーで隣同士で座っている私達は、お互い前を向いたまま会話をする。
ていうかさっきからこんな感じ。
『いたずらする気も起きないなぁ……』
「…てめーまだ懲りてねぇのかよ。」
なまえの呟きを聞いてナイフをチラつかせるベル。反省してますヨーと前回のお仕置きでナイフが掠った頬を触りながら歯を見せていたずらっぽく笑う。
こいつ全然反省してねぇ。
「…お前さ、少しは女らしくしようとか思わないの?」
俺やスクアーロにいたずら考えてないで、スカート履いてみるだとか、化粧してみるとか。今もソファーに胡座で座っているし。
ベルが言えば、なまえはフッと鼻で笑った。なにコイツむかつくんだけど。
『こんな職業だとめんどくさくなるよね。』
真っ黒な隊服に身を包んだなまえは、今日もすっぴん。休みの日くらい化粧してみればいいものを。
「なまえの不細工な顔も、少しはマシになると思うけどなー。」
『聞こえてるよ、ベル君。』
ギロリと睨めばベルはしししっと笑うだけ。会話は途切れる。
仕方ないので視線は窓。早く雨止まないかなー。暇過ぎて死んでしまいそう。
こんな日にマーモンもスクアーロもどこ行っちゃったんだろう。なんでこんな奴と二人きりで……
「話は聞いたわ!!!」
『どこから出たオカマ。』
ソファーの裏から両手を広げたポーズで登場したオカマ……ルッスーリア。なんだか周りがキラキラしているように見えますが。
「ベルちゃんの言う通りだわ。なまえも少しはオシャレしなさいな。」
……何かと思えば。
やたらと腰をくねらせるルッスーリアに、小さく溜息をついた。
『あのね、私は別に「というわけで、アタシがなまえを可愛くしちゃうわ!」
『聞けよ。』
まっかせてちょうだぁ〜いっ!と小指を立てながら張り切るルッスーリアを無視して、ベルに助けを求めるように視線を送れば、
「ししっ、おもしろそーじゃん。」
やたらニヤついていた。
こいつに助けを求めたのがミスだった。なまえ一生の不覚。
「じゃ、準備するからここで待ってるのよん♪」
楽しそうに談話室を出て行ったルッスーリアを見守っていると、あぁみんなも暇なんだなぁと思えた。ま、私も暇だったし、付き合うか…。
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