しばらくして、両手に大量の化粧道具を持ってきたルッスーリアが帰ってきた。というかちょっと待て。
『なんでルッスの方が私より化粧道具いっぱい持ってるの!?』
「オンナノコはこれくらい持っていて当たり前よ。」
むしろなまえが少な過ぎるのよ、とさえ言われてしまった。ルッスに言われるなんて…!
「さ、早く座ってちょうだい。」
談話室のソファーを動かして、ルッスと向かい合う様に座る。うぅ、なんか緊張する。
「なー、そいつホントに可愛くなんてなるのかよ。」
別のソファーに座っていつの間にかジュースを飲んでいるベルが茶化すように言う。なんなんだコイツ部屋に戻ったかと思ってたのに。
「大丈夫よ。お化粧ってね、どんなにひどい顔で『待ってルッスなんか軽く傷つくところだったんだけど。』
何この人、基オカマ。さらっと涼しい顔でひどいこと言おうとしたよ?あらごめんなさいと首を傾けるルッスーリアにまた楽しそうにしししっと笑うベル。もう嫌だ、早く終われー!
「それじゃ、目を閉じて。開けちゃダメよ?」
『ん…』
促されるまま目を閉じると、顔に柔らかい何かが掠っていく。あぁ、ファンデーションか…とぼんやり考えていた。
ひとまず塗り終えた後、カチャカチャと道具を漁る音が聞こえた。その音に反応してつい目を開けてしまう。目の前にはマスカラを持っているルッスーリアと、ルッスーリアの座っているソファーの背もたれの上に座るマーモンの姿が。
『…あれ?マーモン?』
「やぁなまえ。なんだかおもしろそうな事をやっているから、僕も混ぜてもらおうかと思ってね。」
お金を数えるのに飽きていたところなんだ。マーモンは相変わらずの無表情で、でもどこか楽しそうに言った。そうなんだ。えーっと、こう言うときはなんて返せば良いんだろう。
『…ご、ごゆっくり?』
「なまえ、ちょっと下向いてて。」
マーモンへの返事を考えて考えてやっと出た言葉(!)をルッスーリアにバッサリと切られた。ちくしょう。
そう思っている間にマスカラを塗られ、次にビューラーを当てられる。痛くない?と聞かれ、うんと答えているとカールしていく睫毛。
「なまえって意外と睫毛長いよな。」
すぐ近くからベルの声がした。うわ、お前いつの間にこっちに来たんだ!マーモン同様気配がない。変なところで暗殺部隊発揮してやがる。
「普段から化粧しないのかい?」
『したって血で汚れるし、汗でぐちゃぐちゃだし…。』
「勿体ないわねぇ…。なまえにだったら毎日だってこうしてあげるのに。」
『あはは、ありがとールッス。』
「化粧すりゃあ少しは変わるじゃねぇかぁ。」
『!!』
今 度 は お 前 か 。マスカラを終えた後ゆっくり振り返れば、そこにいたのはやはりスクアーロ。雨なのか汗なのか、髪が濡れている。
お前等と違って俺は鍛練して来たんだぁ!とスクアーロは吠えた。誰も聞いてないよ!そしてうるさいよ!
「ほらほら、後少しで終わるからっ」
少し語尾が跳ねたルッスーリアの言葉と共に前を向かされる。い、痛いよ…!
「やっぱりアジア系ななまえは幼い顔してるわよねぇ〜…。本当はもっといろいろやりたかったけど、これくらいが丁度良いんじゃないかしら?」
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