『あの、ボス…?』
「なんだ。」
『私はいつまでここにいれば…。』
「ずっとに決まってるだろ。馬鹿かテメェは。」
ここ。さっきからずっと私が座っている場所。それはボスであるXANXUS様のお膝の上である。ボスがサラサラと書類を書くのを目の前で見れるのは嬉しいのだが、後ろから聞こえてくる声だとか息遣いだとか、背中に当たるたくましい腹筋だとか、それはそれは私にとってとても毒な物で。
『私がこういうの弱いのわかってて、こういうことしますよね…。』
「ぶはっ、よくわかってんじゃねぇか。」
ボスが笑ってくださるのはとても嬉しいのですが、笑った瞬間に私の首筋にボスの息がかかってくすぐったいのです。
別にこの状況が嫌いな訳ではありません。ただ、あまり男の方に耐久性が無い私だからどうしていいのかわからないのです。きっと顔も真っ赤なんでしょう。だってすごく熱いんですもの。
「ボス、失礼するぜぇ。」
『あ…。』
ノックも無しに入ってきたのは、スクアーロさんでした。紙の束を片手に私を発見したスクアーロさんは、ボスにニヤリと笑いかけます。
「見せ付けてくれるじゃねぇかぁ。」
恥ずかしくなって思わず顔を伏せてしまった私に対し、ボスはテーブルの上にあったワイングラスを投げました。こ、こんな近くでワイングラスが飛んで行くのを見たのは初めてで驚きました…。
投げつけられたスクアーロさんはゔぉ゙い!と何度か吠えていましたが、ボスは完全にスルーを決め込んでいました。諦めたスクアーロさんは束をテーブルにバンッと置いて出て行ってしまいました。
……ビックリした。スクアーロさんってあんなに怖い顔も出来るんですね…。情けないほど縮こまってしまった私を見て(視線を感じました)、ボスは私の頭をポンポンと叩いた後、乱暴に、でも優しい手つきでワシャワシャと撫でてくれました。
「怖かったか?」
『い、いえ。あんなスクアーロさんを見たのが初めてで…ちょっと驚いてしまっただけです。』
「そうか。」
ぐしゃぐしゃになった私の髪を、今度は丁寧に丁寧に指で梳いてくださるボス。そしてそのまま髪に軽いキスをしました。なななんだかいちいち緊張します…!
「…てめぇは他の女とは違う。」
『…はい…?』
「九代目の息子である俺に、時期ボス候補である俺に近づいてくる女なんて腐るほどいた。」
そう言うとボスは、後ろから抱きしめてきた。顔を私の肩に置いて。ま、また顔の熱が上がる。恥ずかしい…恥ずかしいですボス…!
「ぶはっ、茹でダコか。いつまでも慣れねぇ奴だな。」
『だって、ボスかっこいいし、緊張だってします…!』
元々ただの一般市民だった私。花屋でバイトしていて、たまたま注文先が此処だっただけ。その後、突然うちにボスがやって来たと思ったら、そのままヴァリアーに迎えられて、今に至るのです。
世界観が違いすぎるというか、此処にいらっしゃる方々は皆かっこいいのですが、ボスはその上をいっている感じで…。
慣れろという方が無理なんです!
「おい。」
『な、なんでしょうか?』
抱きしめるのをやめたかと思えば、くるりと回される体。久々に見たボスのお顔。傷だらけだけど、綺麗で整ったお顔。
『ボス…?』
「名前だ。」
『え…。』
ポカンとしている私に、ボスはもう一度「名前で呼べ」と囁いた。ああもうダメです。熱すぎて目眩がしてきました。それでもボスの目が私を逃がしてはくださらないのです。「様とかつけるんじゃねぇぞ」と忠告され、手も背中に回されてしまって、私は、覚悟を決めるしか無いのでしょうか。
『……ス…。』
「聞こえねぇ。」
なんて楽しそうに笑うのでしょうか。私は顔から湯気が出てもおかしくないくらい真っ赤だというのに!
『…ザンザス…!』
力いっぱい目をつむり、やっと出た声は震えていました。ですが、ボスが優しく頬にキスをしてくれたので、私の緊張の糸などすっかり切れてしまったのです。
臆病だけど勇敢な君に
「おいオカマ、ボスの部屋の前で何してんだよ。入れねぇだろ。」
「ダメよベルちゃん。邪魔したらぶっ殺されるわよ。」
「はぁ?」
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これが甘々…!?
スクアーロは友情出演です←
'11.08.13 一部修正
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