寝起きのブチャラティとベッドで
 小鳥のさえずりで目が覚めた。朝独特の澄んだ空気の匂いがする。窓から差し込む光はやさしい。

 腰が気怠い。昨晩、散々ブチャラティに抱かれたせいだ。
 眠気覚ましに、コーヒーでも淹れよう。
 起き上がろうとして、違和感に気づく。

「え、うそ…」

 ―――入っ、ちゃってる…!

 寝惚けていた頭が急速に覚醒した。
 昨晩の行為のあと、そのまま眠ってしまったことを思い出したのだ。

「うわぁ……」

 妙な感覚だった。柔らかく、精子で濡れたペニスがまだ私の中に入っている。
 引き抜こうにも、後ろからがっしりと腰を抱かれていて、ほんの少しも動けない。

 毛布の下、くっつき合う私たちは全裸だ。確認するが、ブチャラティは完全に眠っている。眠ったまま私の腰を抱いて、すやすやと安らかな寝息を立てている。

「ん…んん〜〜〜…」

 なんとか後ろを振り向くと、私の肩越しに、彼の美しい寝顔が見えた。
 長い睫毛に、乱れた前髪。きめ細やかな肌はうっすらと汗ばんで、嫌でも昨夜の情事を思い浮かべてしまって、お腹の下のあたりがきゅんとする。

 ―――って、こんな時に濡らしてどうするのよっ!!

 ペニスはクタクタ、当の本人はまだ夢の中。
 私がこんなにもどかしい思いをしているのに、素知らぬ顔で眠っている彼が憎たらしい。

 そもそも、寝ているときにペニスを刺激したらどうなるのだろう。寝ていても、ちゃんと勃起するのだろうか。

 少しの好奇心と、湧き上がる性欲。
 私はキュッと膣を締めて、ゆっくりと腰を動かした。キツく抱き締められているので、動ける範囲は狭いけれど、これはこれで気持ちいい。制限や障害がある方が、人は燃えるものなのだ。
 幸いなことに、散々出しまくった精子は乾いていないし、私の中もいい具合に濡れはじめている。おかげでなかなかスムーズに動けた。

「ん…」

 思わず吐息が漏れた。ペニスがじわじわと硬くなってきて、快楽の波が押し寄せてくる。
 ―――寝てても、大きくなるんだ…。
 それがわかったところで、どうにもならない。半勃ちのペニスを味わいながら、懸命に腰を動かす。

「何してるんだ」
「きゃ!」

 グン、と下腹部を急に圧迫されて、大きな声が出た。

「ボンジョルノ、ユウリ」
「あッ…!」

 寝起きのブチャラティの声はヤバい。
 いつもより低く掠れて、熱っぽく、ひどくセクシーなのだ。そんな声で耳元で囁かれると、もうダメだ。自分の中の女としての部分がとろけて、なにも考えられなくなる。

「ユウリ、教えろよ。ひとりで何してたんだ」

 言いながら、ギリギリまでペニスを引き抜いて、
「なあ」
 一気に奥まで叩きつける。

「あぁぁんッ!」

 声が抑えられない。これだ。これが欲しかったんだ。
 完全な硬さとなったペニスを膣でしゃぶりながら、身体が震えるほどのたまらない満足感を得た。

「あぁんっ! ブチャラティ、これ、欲しかったのぉっ!」
「そうか、欲しかったか。…で、なんで起こさなかったんだ」
「だって…!」

 あとの言葉は声にならなかった。ブチャラティは、私が弱いと知っていてわざと耳元で喋るのだ。

「スゲェ濡れてるぞ。お前、半勃ちのチンポでこんなに感じてたのか?」
「や、やだ…!」

 からかうみたいな口調で言われ、恥ずかしくて顔を手で覆った。

「顔、見せろ」
「あっ」

 両手首を掴まれ、シーツに縫いとめられる。無理やり仰向けにさせられたが、それでもペニスは入ったままで、正常位の格好になる。

「これでやっとキスできるな」
「あ…!」

 起き抜けから早々に、オープンマウスの激しいキス。お互いに舌を探り合い、唾液を絡める。
「ん…んぅ…! んむぅ…!」
 その間にも腰はゆるゆると動かされ、ペニスが浅く出たり入ったりを繰り返す。

「あッ…あん、あぁん、うぅんッ」
「はァ、…あぁ、…」

 尻を浮かせて、男の腰に脚を絡める。間抜けな体勢だが、こうするとさらに密着できて、快感がさらに増すのだ。

「あぁん、あっ、ブチャラティぃ…!」
「ン…」

 パンッ、パンッ、と肉のぶつかる音がする。互いの太もものあたりまで、体液で濡れてびしょびしょだ。
「ユウリ、」
「んっ…」
 呼吸を奪うように、ブチャラティが唇を重ねてくる。ぬるぬると舌を絡めながら、ペニスで奥をほじるみたいに腰を動かす。

「あぁぁん! 奥ぅっ、グリグリするのダメぇ!」
「ダメじゃないだろ」
「あぅ、んぅぅっ、ダメ、ダメだってばぁ…!」

 途切れ途切れ、呼吸の合間に、ブチャラティがキスを降らせる。キスにも律動にもどこか余裕がない。きっともうイキそうなのだろう。彼はキスしながらイクのが好きなのだ。

「…は、…ユウリ…!」
「あん、イッちゃうの? ブチャラティ、イッちゃうの?」
「ああ、もう、出るッ…!」

 無意識のうちに膣を締めていたらしい。ブチャラティの表情が歪んだ。
 セクシーで、可愛い。気づくと唇を求め合っていた。

「んッ、んん…あん…!」
「出るッ、ユウリ、もう出すぞ…!」
「んむぅ、出して、いっぱい出してぇ…!」
「く…ッ!」

 湿っぽいリップ音を重ねながら、ブチャラティは私の中に射精した。
「あ! だめ! いっ、イクぅ、イっちゃうぅ!」
 精子を吐き出しながら彼が動くので、私も耐えきれずにイッてしまった。

「もぉ、イキながら奥突くのダメぇ…」
「なんで。好きだろ」
「だからダメなの! 気持ちよすぎて、ヘンになっちゃう」

 言いながら、ゆっくりとペニスを引き抜いた。一晩ぶりにペニスが体内から出ていって、妙な喪失感があった。

 ブチャラティの腕に遠慮なく頭を乗せて、胸元にすり寄る。
 ぽんぽんと頭を撫でられて、気持ちいい。ブチャラティはフッとちいさく笑った。

「お前はそういう素直なところが可愛い」
「そうなの?」
「ああ。だが次はヤリたくなったらちゃんと起こせ」
「わかった。…ん?」

 素直に頷いてから、ふと気づく。
 元はと言えば、ブチャラティが昨日ペニスを抜かずに寝たのが原因じゃあないか。

「…次はおちんちん抜いてから寝てよね」
「なんで」
「えっ。むしろなんで抜かなかったのよ」
「わからねえのか。繋がっていたいだろ」
「えぇぇ…」

 そんなのズルい。今の超キュンキュンきた。寝起きでセックスしたばかりなのに、また欲しくなってしまう。

 それが伝わったのか、それともブチャラティもまた催したのか、なあ、と耳元で囁いて、彼がまた覆いかぶさってきた。大好きな低い声にゾクゾクする。

 そのまま何を言うでもなく、どちらともなく唇を重ねた。
 セックスの気怠さを引きずって、身体を求め合う、こんな朝も悪くない。




2019.05.15
お題「寝起きのブチャラティと甘々エッチ」
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