03
 そして、指定された日付と時刻に、メモに記してあったホテルの部屋を訪れ、そこでようやく、話は一話の冒頭に戻るのである。


 下腹のあたりをまさぐられながら、ナランチャは、楽しそうに犬歯を覗かせるその女を見つめた。「ユウリ…」気まぐれにその名も呼んでみる。

「まだ怖いの?ナランチャ」

 クスっと笑って、子供をあやすようなキス。ユウリは、脱がせてよ、と自身のワイシャツのボタンに、ナランチャのふるえる指先を導いた。

「う…なんで、俺が、こんなこと…」
「ぐだぐだ言わないの。今後のためにもなるでしょ」
「うぅ…」

 嫌々、といったふうに顔を顰めながら、ナランチャはユウリに従い、すでに大きく開かれたワイシャツのボタンをプチプチと外していく。
 露わになった濃紺の下着に、ナランチャは思わず固唾を飲み込んだ。

「触って」

 言えば、ナランチャの肩がビクリとふるえる。おずおずと伸ばされた手が、下着のレースをずり下げ、淡い色の乳頭を露わにする。敏感なそこは、外気に晒されただけでツンと上を向く。ユウリは構って欲しそうに腰をくねらせる。
 ここまで来れば、ナランチャの欲も昂ぶり始め、ユウリに指示されるまでもなくその突起を口に含んだ。

「ンッ………そう…あっ」

 小粒な飴玉を転がすような舌使いに、ユウリは惜しげもなく喘ぎをもらす。初めて耳にする女の喘ぎ声に、ナランチャの心臓は高鳴った。

「へ、変な声出すなよ…」
「だって…んっ」

 濡れた乳首に吐息が掛かり、それすらも刺激になるらしくユウリは首を仰け反らせる。その首筋に噛みつくと、ユウリは小さく笑ってナランチャの髪を撫で上げた。

「吸って。そのまま」

 …吸う?首を傾げながらも、言われるがまま、薄い表皮を吸い上げる。唇を離すと、吸った場所には不恰好な鬱血の痕が刻まれていた。「良い子ね」美しいとは思えなかったが、何故だろう、まるでユウリが自分の所有物であるという証みたいでドキドキした。

 俺にも、と口にするのはプライドが許さないナランチャ。
 それを見越しているかのように、ユウリは素早く、彼の首筋に唇を寄せた。
 一瞬、全身を貫く、ぴりっとした痛み。ユウリと同じ痕が、自分の首筋に刻まれているのだろうとナランチャは思った。

「ハァ…あ…」

 力の抜けたナランチャの下半身から、ユウリは下着ごとボトムをはぎ取り、子猫を撫ぜるように内ももに触れた。モノは既にいきり立ち、周辺への刺激だけでビクビクと過敏に反応している。
 亀頭に滲むナミダを指ですくうと、ナランチャは腰を浮かせて、ヒッ、と声を上擦らせた。



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