05
 緊張した手のひらが、私の肩を撫で、ブラウスを脱がす。はらりと落ちてゆくそれをベッドの端に追いやって、私は、花京院君の拙い愛撫を受け入れる。

 一糸纏わぬ姿となった花京院君は、あれから、手だけでもう一度射精した。
 そのおかげで火が点いたのか、彼はもう、抵抗することをやめた。恥ずかしそうに求めてくる彼が愛しかった。

「ユウリさんは、どこが感じるの」

 まさに今撫でている乳首がそうなのだが、私は敢えて言わなかった。

「どこだと思う?…当ててみて」
「………」

 花京院君は、困ったような顔をした。なんて可愛いんだろう。
 最初から答えがわかっていたらつまらないでしょう、と言いかけて、彼が胸の先を口に含んだので、それは声にならなかった。

「………ッ」
「…ここ…?」

 ちゅぱ、という音とともに、彼は呟いた。唇に伝う透明な糸を舌に絡め、私の返事を待たずにまた、くちをつける。

「ん…っ」

 だめだ、良すぎる。今までに感じたことのない舌使い。彼は本当に初めてなのだろうかと、一抹の予感が頭をよぎる。
 右手はもう片方の胸を弄っていたが、ゆっくりと下降してゆき、今は太もものあたりを撫でている。
 私はその手をそっと握ると、私の体の、一番柔らかい部分へと導いた。

「これって…」

 目が大きく見開かれる。既に水気を帯びたそこを、形を確かめるように、花京院君は顔を赤くして何度も指先で撫で上げる。

「ん…、ぅ…っ」

 擦られるたび、くぷ、と溢れてくるのがわかる。彼がショーツのすき間から指を入れようとしたので、ちょっと待ってねと言ってそれを脱ぎ捨てた。

「もっとエッチなことしよ…?」

 花京院君を仰向けにする。はじめ、何が何だかわからない、というような顔をしていたけれど、そんな彼の顔を跨ぐと、花京院君はようやく事態を察したのか、眼を大きく見開いて全身を緊張させた。

「ユウリさん…」

 ごくん、と生唾を飲み込む花京院君。今の彼には、私の恥ずかしい部分が丸見えである。
 徐々に腰を落とし、花京院君の鼻先に、秘部を押し付けるような格好になる。はあ、と熱い息がそこを掠め、そして次の瞬間には柔らかな舌で濡れた肉をからめとられていた。

「ん…っ」
「はぁ、はぁ…」

 ちゅぴちゅぴと恥ずかしい音が小刻みに聞こえてくる。割れ目をなぞる舌は、少しぎこちないけれど的確に良いところを突いてくる。

「あ、…ン」

 私が感じているのが嬉しいのだろうか、声を上げると花京院君の愛撫は激しさをより増した。
 びくびくと体を震わせながら、花京院君のペニスに唇を寄せる。私のアソコを舐めていただけでこんなにかたくしているなんて、花京院君は本当に可愛い子だ。
 亀頭を舌先ですこし弄んでから、ペニス全体を口に含む。

「はぅっ…」

 花京院君の腰が強張った。頭を上下に動かし、唇で扱くようにしてやると、彼は私の下半身を愛撫することさえ忘れてアンアン啼いた。

「あぁ…!ユウリさ、…!」
「花京院くん…腰が浮いてる」

 唾液と花京院君の体液とですっかりべとべとになったペニスを手で扱き、先端の方は舌先でクリクリと刺激する。それを何度か繰り返すと、花京院君は私のアソコに鼻先を押し当てるようにして声を殺し、そして射精した。
 どぷっ、とあふれた薄白い液体が、私の頬や唇を汚す。
(言ってくれたら、飲んであげたのに…)
 少し残念に思いながら、そばにあったティッシュで濡れた箇所をふいた。花京院君はまぶたを半分落とし、恍惚の表情で私を見ていた。

「ユウリさん、こっち…」ぐい、と持ち上げられ、花京院君の隣に寝かされる。緩慢な動きで抱きしめてくる腕が心地よい。
 この腕を裏切りたくはないなぁ。と、そんなことを思ってしまう自分はやはり、物語のヒールには向いていない。

 少年の腕の中で、そのあたたかさに目を閉じる。彼を汚してはいけない。彼を傷つけてはいけない。そう、心で理解しているはずのに、DIOに毒された私の体は言う事を聞かないのだ。

 力なく垂れ下がるペニスを手先でつついた。
「…ん…」
 彼の吐息が耳元をくすぐる。
「いったばかりだから…なんか、変な感じがする…」と、花京院君は囁くようにして言った。

 くにくにと弄んでいるうちに、それはまたふたたび硬さを取り戻し、気付けば腰を押し付けられていた。
 くい、くい、と花京院君が腰を動かすたびに、割れ目やクリトリスをペニスがこすっていって気持ちいい。はじめてだと言っていたけれど、性への欲望が開花するのも彼は早かった。

「あっ」ペニスの先端が、悪戯にすこしだけ中に入った。

「花京院くん、そのまま…」
「う、…っん…」

 硬くなった肉の塊が、ぬるりと挿入される。アタマの奥がゾクゾクした。
 私の肉体の最奥は、花京院君の愛撫によってすでにじゅうぶんすぎるほど濡れ滴っていて、彼が初めてであるにも関わらず簡単に繋がることができた。

 他人の熱で、自身の内部が満たされるというのはひどく心地いい。
 逆の立場である花京院君もまた、初めての女の体にうっとりと蕩けるような表情を見せている。

「は…、あ」

 花京院君が上になり、正常位の形で私を揺さぶる。ペニスが最奥に叩きつけられるたびに、彼の柔らかな陰毛が脚の付け根にふれた。

「いっ…、あぁ」

 はあ、と零れる熱い吐息。強く抱きしめてくれる優しい両腕。
 この少年の熱も腕も、声も眼差しも、私はきっと一生忘れない。

「はぁ…、ユウリさ…っ、良い、ですっ…」

 腰を振る速度が増す。そろそろ限界が近いのだろう。
「な、中に…」限界なのは私も同じだ。「中に、出して…」
 ぎゅう、としがみつくように花京院君の首に腕をまわす。
「ユウリさん…」
 翡翠の色をした瞳が、乱れ喘ぐ私を捉えた。その悩ましい眼差しに思わず息を呑む。
 この少年は―――この目は宜しくない。全てを捨てでも、手に入れたくなってしまう。

「…僕はユウリさんが好きだよ…」

 切なげな吐息が鼻先を掠める。同時に、脳髄が一瞬ひやりとして、全身が強張った。冷静に、自分が達したことを理解する。
「う…」一拍遅れて、精子が吐き出される。勢いよく溢れてゆくそれを体内に感じながら、汗ばんだ彼の頬に手をすべらせた。


「…逃げよう。一緒に」
 ―――僕が貴方を守るから。
 ―――僕はもっと強くなる。
 

 夢心地で呟かれるそんな陳腐な言葉さえ、受け入れることができない自分が悲しかった。




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