04
 初めて触れた女性の体は、花京院の想像以上にやわらかく、性的で、何よりも美しかった。普段とは違う香水の、良いにおいがした。

「あぁ…ン」

 衣擦れの音が、悩ましい喘ぎ声にかき消える。
 いちばん感じる、というところを、花京院は執拗に舌で責め立てた。

「っい…あぁ、んっ…」

 クリトリスをかたくした舌先でつついてみたり、入り口にほんの少しだけ指を入れてみたり、花京院の愛撫は拙いながらもユウリを快楽の渦に巻き込んでゆく。

「はぁ…スゴイ…ユウリさん、こんな…」
 こんなに濡れるんだ、と、半ば感動したような声。

「んっ、だって…あんっ」

 乳首を摘まれ、びく、と弓なりに仰け反るユウリ。はじめて女を抱くというこの少年の、試すような、けれど嘘のない愛撫に酔い痴れる。

 秘部への刺激が変わり、ふと見れば、花京院は息を荒げて、ペニスをそこにこすり付けているのだった。

「は…あ、花京院、くん」
「ぅ、ユウリさん、これ、気持ちいいよっ」

 チュクッ、チュクッ、と割れ目からクリトリスまで滑っていくペニス。入れてほしいけれど、これはこれで気持ちいい。

「ん…あぁん、花京院くぅん…」

 気付けば腰がゆれていて、けれど快楽に侵されたユウリの頭は、それを恥じる余裕すら残っていない。

「あん、ねえ、もぉ入れてぇ…おまんこハメて欲しいよぉ」
「ユウリ、さん」

「ここに、欲しいのぉ」ペニスを入り口に宛がわれ、花京院は、ごく、と固唾を飲み込んだ。

「ん…」

 くち、と、ペニスの先が肉のひだを割って、埋まっていく。 ユウリは花京院の首に腕をまわし、はあ、と大きく息を吐いた。

「そのまま、奥まで…」

「あぁん!」ずりゅ、と奥まで差し込むと、途中からそれは嬌声に変わる。
 花京院は、ユウリを抱きしめながら、極上の果肉に陶酔する。つま先から頭の天辺まで、突き抜けるような快感に震えてしまう。

「あ…ッ、ユウリさっ、スゴ…」
「ん、んっ」

 ほどんど無意識のうちに、がくがくと腰を揺する。腹の中で、ぷちゅ、ぷちゅ、とこすれるカリ首。ユウリが喘ぐ度に締まる肉の壁。どこもかしこも、とろけてしまいそうになる。

「ぁ、ん…あっあっ…んふぅ…」

 律動に合わせてユウリも腰を使い、より深部まで刺さるようになる。突かれるたびに、脳髄に甘い痺れがはしる。

「あぁぁ…はぁん、花京院くんっ…」
「ユウリさん、ユウリさんっ、あぁ、ぼくっ…」

「んむっ」荒っぽく、痛みすら感じる口づけに、ユウリは、こっちも教えなくちゃぁダメねと、薄暈けた意識の中で思った。

「ユウリ、さっ、ぁ、ごめ、なさ…」
 ヘコヘコと腰を揺すりながら、花京院が言った。
「さっき言ったの、ぅ、ウソです、嫌いになってもいいから、なんて、はぁ、全部、嘘…!」

 ―――嫌いにならないで。できることなら、愛して欲しい。
「…花京院、く…」
 情事の最中に、そんなことを言うなんて、ずるい。
 でもダメだ。頭の中が真っ白で、何も考えられない…。

 視界すらぼやけはじめた中で、花京院がぶるっと大きく震えるのが見えた。

「お…、っん、出る、出ちゃいますっ…」
「ァあん、まって、中は…」

 言いかけて、膣内に爆ぜる熱いものを感じ、ユウリはそれを咎めるどころか彼とともに達してしまった。

「く、あぁ…」

 ぎゅう、と収縮する膣に、花京院は文字通り、搾り取られる、と思った。凍るような快感に、全身があわ立ってゆくようだ。

「はぁ…すごい、よかった…」

 ペニスを引き抜くこともせず、荒く息を吐きながら、きつく抱きしめてくる花京院に、ユウリは呆れを通り越して溜息を漏らした。
 小言のひとつも言いたいところだが、
「ユウリさん、大好きですよ」
 そんなふうに花京院が笑うから、許せてしまうユウリがいた。間違っても、ほんの少しでもドキっとしてしまったなんて、言えない。

「もう…」

 次はちゃんと避妊してよね。
 そう言って頭を撫でてやると、花京院はがば、とユウリを見た。

「次?」
「あ」

「ち、ちが」否定しようと口をひらくが、こちらを見つめる花京院の目には、明らかに期待の色が滲んでいて。「その、花京院くん、私、ンっ」

 最後まで聞かずに、塞がれるくちびる。遠慮なく口内を?き回す舌。

(へたくそ…)

 そう、何度感じたことだろう。けれど同時に、健気で可愛いとも思う。
 …何も知らないまま、ただ純粋に自分を求めてきたこの少年を、好きなように仕込むのも悪くはないかもしれない。
 白い肌によく映える、緋色の髪を撫でながら、ユウリは諦めたように微笑んだ。



了(4/4)
2013.6.27
一周年フリリク/花京院くんの筆下ろしでリクエストしてくださった万葉様へ
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