lonely boy
 妙な感触がして、目を覚ました。微睡んでいた視界に映るのは、紛れもなく自室の天井だ。替えたばかりのカーテンの色が、うっすらと視界の端に見えている。

「あ…ん」

 予期せぬ喘ぎ声が自分の口から漏れ、ハッとする。

「ジョ…ルノ」
「おはようございます」

 熱に浮かされたような低い声。
 見れば、先日発情期を迎えたばかりの愛犬が、私に覆いかぶさり、腰をゆすっているではないか。

「や…ん、ジョルノ…っ」

 既に硬く張り詰めたジョルノのそれは、眠っていた私の柔らかな肉に挿し込まれ、何度も出し入れを繰り返している。

「すみません」寝汗で額に張り付いた髪をよけながら、ひどく優しい声色で彼は言った。「どうしても我慢できなくて」

「そ、んなっ、ふあ、ぁんっ」
「眠っていても濡れるものなんですね」

 クス、と微笑むジョルノ。まるで痴態を笑われたようで、顔がぼっと熱くなる。
 そして、体を許してからもう幾日も経っているというのに、未だに衰えることのない彼の性欲に、僅かだが恐怖すら覚えてしまう。昼夜を問わず、セックスに明け暮れている自分たちが、倫理観から大きくはみ出しているように思えて怖いのだ。

「ちがうこと、考えないで」
「ん」

 額に、唇に、首筋に、何度も何度も、口づける。ジョルノのキスは気持ちいい。与えられるようで、与えているようで。その曖昧さが心地良い。まるで、彼とひとつになっているようで。彼とひとつの存在でいられるようで。

 違うことを考えないで、ぼくのことだけを思って、せめてこうして繋がっているときは。
 吐息混じりにジョルノは言った。「馬鹿ね」と笑うのを堪え切れなかった。

「私はジョルノ以外のことなんて考えちゃいないわ。はじめからね」

 瞬間、ジョルノのモノが中で一段と大きくなる。泣きそうな顔で見つめてくる彼の手をとって、指を絡めた。ジョルノの爪はのびていて、手の甲に食い込んで少し痛かった。あとで切ってあげなくちゃ。

「…ほんとは、怖かったんです」聞き慣れた涙声。泣き虫は変わらないね、ジョルノ。

「ずっと貴方のことばかり、貴方と繋がることばかり考えて、寝てる貴方に欲情したりして、嫌われたらどうしようと、思って、ぼく、怖かったんですっ…」

 あたたかい雫が、胸のあたりに落ちてくる。絡めた手がこわばって、締め付けられるようにギリ、と痛む。
 なんて愛おしいのだろう。私を愛するあまりにこんなにも怯え、弱くなっている彼が、私にはとても狂おしく、とても、愛おしく思えた。

 ぽろぽろと涙を零すジョルノの、濡れた頬を撫でてやる。ゆるゆると振られる尻尾が、足首のあたりに当たってくすぐったい。

「…嫌いになんてならない。私はジョルノの飼い主よ」

 ――― 一生面倒見てあげる。

「おいで」
 そう囁けば、ジョルノはまた瞳いっぱいに涙を湛え、子犬のような声を上げて抱きついてくる。尻尾をぶんぶん振り乱し、私の顔じゅうにキスをする。
 くすぐったいけれど、それ以上に、ふたたび動き始めたジョスノの腰が、私のいちばん感じる部分を責め立てる。

「…あッ、あンっ、あ〜…ッ」

 ぐちぐちと粘ついた音を立て、こすれ合う雄と雌の部位。太さはないけれど、こりっとした先端が奥まで届いて、突かれるたびに頭の奥が真っ白になる。飛びそうになる、とはこういうことを言うのかもしれない。

「んっあっ、やぁ、ジョルノぉ、いやぁ」
「イヤ?…いやですか、ユウリ…?」

 肌と肌とがふれ合う、ぱちゅ、という音がする。頬を赤くして、息も絶え絶えにジョルノが私を見下ろした。

「ちがう、良いの、あっあっ、いいのぉ、ジョルノっ…」
「ぼくも、っん、ぼくも、気持ちいい、です…」

 そう言って、ジョルノはうっとりと目を閉じた。
「ジョルノ」膝を折り、ぐい、と胸元に寄せると、先ほどよりもさらに深いところまで届いて、ジョルノは驚いたような顔をする。

「これ…いいでしょ? いっぱい突いて…」

 言葉の途中に、ジョルノが口付けてくる。いっぱいいっぱい、といった様子の、荒っぽいキス。
 舌を吸い、唇を噛み、どんな好物を味わうよりも大切そうに、私のすべてを食む。

「ふっ…ぁあ…これ、すごい、全部、入って…」
「んっ、あぁん、ふぁ…」
「こんなの、我慢、できな…あッ」

 ジョルノの体がびくんと震え、同時に、腹の中に温いものが吐き出される。

「んっ…あぁ…まだ、出ます…」

 ビュービューと中を満たしてゆくその量は、人間の男の比ではない。愛撫にも似たこの時間が私は好きだった。

「うっ…うっ…止まらない…あぁ…」

 射精している間も、ジョルノは私をきつく抱きしめて離さない。少し腰をゆすってやると、だめですっ、と切なげな表情で言われてしまった。

「び、敏感すぎて…変になりそう…」

 首筋に熱い息がかかる。一度達したにも関わらず、ペニスは時折ぴくんと脈打っている。

「あ…」こぷ、と零れた精子が、太ももを伝い、シーツを汚す。仕事に行く前に洗わなくては。

「あ…ていうか、仕事…」
 もう支度しないと。

「え」
 仕事、という単語に、ジョルノの耳がぴくんと反応する。

「いやです!行かないで」
「無茶言わないで、ほらどいて」
「ダメです、イヤです、ユウリ、行かないで」

 イヤイヤと首を振るジョルノ。いつまで経っても子供のような彼に、思わずふっと笑ってしまう。

「ふふ、だーめ。大人しく待ってなさい」
「…それも、嫌です。迎えに行きますから」

 諦めたように、ジョルノは、ちゅっと音を立ててキスをした。「離したくないです…」
 やわらかい唇。微かに震える背中に腕をまわして、ぽんぽんと撫でてやれば、彼は眉尻を下げて微笑むのだった。




2013.6.25
一周年フリリク/発情期のわんこジョルノでリクエストしてくださった匿名様へ
[ top ]

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -