02
 ユウリだって、子どもではない。大の男を家に上げる時は、大抵はこういう展開を予想する。
 だから今までは、そうなっても良いと思った男しか、自宅に招き入れたりはしなかった。
 故に、今回のことは、ほとんど事故のようなものである。

 こんなことを本人に言えばショックを受けるだろうが、正直言って、花京院のことをそういう目で見たことは一度もなかった。
 顔立ちは整っているし、物腰柔らかで紳士的だし、勉強熱心で良い子だとは思っていたけれど、彼は一人の男子である前にユウリの大切な教え子なのだ。年だってそこそこ離れているし、性や恋愛の対象としてなど考えられるはずもなかった。

(困ったなあ…)

 少し力を入れて抜け出そうとしても、花京院は、ぎゅう、と抱きしめて離さない。こんなに大胆なことをしておいて、彼の体は緊張からか震えていた。

「花京院くん、離して…」
「嫌です」

 唇を噛み、ユウリを見下ろす花京院。熱に魘されたような、つらそうな表情だった。

「ずっと好きだったんです。…もう我慢できません。やっと掴んだチャンスなんです」

 震える声で、一息にそう言うと、花京院はもう一度キスをした。
「…ん」
 唇が離れ、熱っぽい瞳とかち合う。なぜだか泣きそうになっている彼が、ほんの少しだけ可愛いと思えた。

「ぼくのこと、嫌いになってもいい…」

―――だから一度だけ、貴方の全てをください。

「…本気?」

 落ち着いた声で言うユウリに、花京院は、その細い首を縦に振った。



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