■ 飼い猫(尾形)

※現パロ

目に映るのは見慣れた光景。
代わり映えのしない部屋。
あまり高くない平熱のいつものぬくもりがそばにいて。
私たちはソファにもたれてテレビを見てた。
なんの変哲も無いこの瞬間が幸せだと感じる。
「百之助さん、私幸せ。こうやって百之助さんとくっついてられるなんて。」
「そうか」
「百之助さんは?」
「一人でいるよりはマシだな。」
彼は直接的には言わないけれど、遠回りだけれど、私と同じような気持ちであるってことは改めて確認しなくてもわかってきた。
はじめこそ、私のことが本当に好きなのかどうか不安だったけど、彼は言葉より行動で示してくれた。
今だって、私を後ろから、私が壊れてしまうくらい、それでも、壊れ物を扱うように、強い力で抱きしめてくれてる。
そう、正しくは百之助さんにもたれているのだ。彼のぬくもりに包み込まれると未だに胸が苦しくて暖かい気持ちになる。
私のお腹あたりにあった彼の角ばった私とは違う手がおもむろに上に上がってくる。
その少し冷たい手は私の左頬を撫でた。
「くすぐったいよー。」
そう言っても動きは止まらず、恥ずかしさも感じていたところその手に急に力が入り、顔を横に向かされた。
急に動かされた痛みを感じる暇もなく、唇には彼の平熱からは想像もできない熱が注がれた。
「急にどしたの…」
「…」
彼は黙ったままだった。
猫は死ぬ時飼い主の目の前から姿を消すという話をなぜか思い出した。
百之助さんは私にもう一度口付けをした。
先程とは違う。
彼の舌が私の唇を何度も舐めた。
私がそれに応えれば、すぐに舌を絡められた。
それはまるでこれから先も離さないとでも言っているかのようだった。

翌朝、彼は今日も横で幸せそうに寝ていた。
私は昨日、今日予定があることを伝えていなかった。
流石に何も言わずに出て行くのは…と考え、置き書きをして出て行った。

久しぶりに会った友人との会話が弾み、気づけば時計の針は9時を回っていた。
急いで自宅へ戻ると玄関では百之助さんが待っていた。
「どこ行ってた、こんな時間まで」
「え、っと、置き書きみた?友達と会ってたんだよ。」
「遅すぎる」
「…ごめん」
「今度から門限をつくらねぇとな。」
「えっ、そんな…!」
私は少し腹が立ってしまった。少し遅くなっただけなのに…。
「じゃあ、早く帰ることだな」
「もう、いつも束縛ばっかりして、今日という今日は耐えられない…!」
私は頭に血が上り、そのまま外へ飛び出した。

近くの公園でブランコに乗ってさっきの会話を頭の中で反芻する。
やっぱり百之助さんは私のこと心配してくれてたのかな…。言い過ぎたかもしれない…。でも、合わす顔がないし…。グルグルと同じことを考えてばかりいると。
向こうから人影が見えた。
こんな時間だ、もしかしたら不審者かもしれない…。咄嗟に身構えるとその人影は百之助さんだった。
「帰るぞ」
「…うん」

玄関に入った途端、前にいた百之助さんが抱きついてきた。昨日とは比べものにならないくらいの力で。
「ちょっと、痛いよ…百之助さん」
「…………な」
「え?」
「…どこにも行くな」
彼は私の肩に顔を埋めている。服が水分を吸っていくのを感じる…?
「な、泣いてるの…?」
「泣くわけないだろ」
束の間の沈黙の後
「…悪かった」
「いいよ、私もごめんね」
こうして玄関先での喧嘩は玄関先で幕を閉じたのだった。
「とりあえず、部屋入ろうよ」
「…」
私が足を踏み出せば、彼は後ろに回り、抱きついたままだった。
「百之助さん、歩きづらいんですけど…」
「…」
ソファにつけばまたいつものように幸せな時間が訪れる。





フォロワーさんの妄想を元に書きましたが
妄想からだいぶ逸れてしまった感。
あと尾形さんに、ちゃんとなってるのかしら





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