■ 染み付く匂い(尾形)

※一緒に旅してる
※白石奪還後あたり

空が赤くなり夜が徐々に近づいてくる。
みんなが今日の夕飯を獲りに行っている間に私1人だけ留守番をしていた。
ガサッと音がした。
熊だったらどうしようと思い恐る恐る様子を伺うと尾形さんの軍服の上着が落ちていた。
春になったとはいえ北海道は寒い。
尾形さんは寒くないのだろうか。
どうして尾形さんの軍服がこんなところに?と不思議に思う気持ちともう一つの気持ちが湧き上がった。
触ってみたい。
私は知らぬ間に尾形さんに惹かれていたのだ。
尾形さんの軍服をみると胸が疼いて仕方がない。
だが、人の服を勝手に触ってもいいのだろうか。
もし本人がここに戻ってきたら…どう思われるだろうか。
変に思われ嫌われてしまったら困る。
それでも私は吹き零れる好奇心と恋心を止めることができなかった。
彼の軍服にそっと触れてみる。
これが尾形さんがいつも着ている軍服、そう改めて思うと胸がじわりと熱くなった。
誰もみてない、とそう言い聞かせ匂いを嗅いでみる。
尾形さんの匂いがする。男の人の匂い。
好きな人の匂いというのは麻薬のようだった。
少しだけと考えていたにも関わらず止まらなくなってしまった。
もっと、もっと尾形さんを知りたい。
尾形さんの軍服に夢中になっていたからか草が揺れる音に気がつかなかった。
「…おい」
「…!?」
その低い声に私は眩暈を感じた。
だってそれはこの軍服の主だったのだから。
「苗字、なに嗅いでんだ。」
「…あの、えっと…ごめんなさい!!」
「別に謝って欲しいわけじゃない。」
「でも、ごめんなさい。これは、違って、好奇心で…」
本人が帰ってくるなんていう最悪の事態に私はこの世の終わりかのような顔をしていただろう。
「好奇心?」
「そうなんです、決して変態とかではなくて!!」
「言い訳にしか聞こえんな。」
「…どうか、嫌いにならないでください。」
嫌われたくない一心で言ってしまったこの一言。…しまった。これでは恋心もともに白状してしまったようなものである。
どす黒い嫌な気分に覆われる。
きっと嫌われてこれから気まずい毎日を送るんだと。
ふと何かあたたかいものに包まれる。
先程の軍服のと同じ匂いだが一層強い匂いに包まれ頭がクラクラする。
尾形さんに抱き締められていたのだ。
「…えっえっと…?お、尾形さん…?」
「…」
「…?」
「餌にかかったな」
「どういうことですか?」
「名前、俺が好きだろ」
「へっえっ…?」
好きな人に名前を呼び捨てにされるのはこんなに胸が締め付けられるものかと痛いくらいに思った。
次の瞬間、首筋に甘い刺激を感じた。
「っひゃ…んっ」
「…」
「尾形さん…」
尾形さんが首筋を舌でなぞる。
なぞられたところが発火してしまいそうなくらい熱くなった。
「お、尾形さん、どういうつもりですか?」突然された行為に少し怯えつつ尋ねる。
「お前の気持ちに確信を持つために罠を仕掛けたってわけだ。」
「罠…?」
そこで私は気がつく。この人には何もかもバレていたのだ。見事に罠にかかってしまったのだ。
「どうやら俺と同じようだな。」
「えっ尾形さんそれって…んっ」
私が彼の気持ちをしっかり聞こうとした時に彼の口は気持ちを答えず私の唇に重なった。
何度も何度と口づけを交わし徐々に深くなっていく。
「んっ…ふぁっはぁ」
「…はぁ」
彼は私の吹き零れた気持ちさえ飲み込んでしまった。




尾形さん、難しい…
きっとこんなにデレない…。
また挑戦します。

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