ふわり、ふわり
何だか空を飛んでる感じ。
『………ん』
私が目を開けると、辺りは真っ暗で、まだ夢の中かと勘違いしてしまいそうだった。
ふと横を見ると、月の光で外の景色が見える。寝ぼけた頭を整理すると、私は洞窟の入り口に寄りかかって座っているのだ。
『眠っちゃったのか、急いで学園に帰らなきゃ……』
立ち上がろうとした私は、そのままズルッと地面に倒れ込んだ。
仰向けになり、ピクリとも動かせない体に疑問を抱きつつ、目の前に広がる満天の星空と美しい月が目に入った。
『………満月だ』
そして、気付いた。
あの日から、もう一週間程経ってしまっている。
だいたいの目安だが、二日で忍術学園に戻れる計算だった。
少し手こずったが任務は無事成功し、依頼主にも感謝され、後日お礼の品を忍術学園に届けると言っていた。
それから…………
それから?
――――早く帰ろう!
――――貴方に、一番に「おかえり」って言って貰いたいから。
そうだ、だから近道をして森を抜けようとして…………
夜空を見つめたまま私は、お腹の横にだらんと伸びた自分の手に水溜まりがあることに気付く。
意識を集中してみると、お腹の辺りの服にも染み渡っているようだ。
……………あ、そうか、
気が緩んで油断していた私は、
山賊に襲われて、
その時に………――――
確認は出来ないが、きっと私の服は、真っ赤に染まっているのだろう。
痛みはない、というより感覚がほとんどない。
体が段々冷たくなっているというのに、何故か私は落ち着いていた。
ふわり、ふわり
このまま体が浮いて、お星様になってしまいそう。
少し眠くなって、ゆっくりと瞼を閉じた。瞼の裏に浮かぶのは、私の大好きな、お日様みたいな笑顔をした貴方。
ありがとう。
私の心は、貴方のおかげで十分満たされたわ。
だって体は冷たいのに、心はこんなにポカポカしているんだもの。
そういえばお団子、約束したのにごめんなさい。貴方と一緒に食べに行きたかった。
「ごめんなさい」も伝えられなくてごめんなさい。
ああ、まだ貴方に「ありがとう」とお礼も言えてなかったな。
この心の温かさは、まだ孤独だったあの頃に、貴方がくれた言葉が教えてくれたのよ。
貴方は……、覚え……て……