「それにしても……これで帝国軍とは、完全に敵対したわね」


帰り道、アルディラがふと呟いた。

確かに、前に一度戦闘を行っているが、それはビジュ達の行動を阻止するためのものであり、明確に敵対したわけではなかった。


だが、今回は違う。


隊長であるアズリア自ら指揮した部隊と、真っ向から俺達は衝突した。
そればかりでなく、俺が奴らの任務を妨害しているという事実も明らかになった。

アルディラの言う通り、こちらがどう思っているかに関わらず、事実上完全に敵対したわけだ。



「戦うとなると、アズリアは厄介な奴さ」
「もしかしてユキ、あの隊長さんと知り合い?」
「んー、一応?」



驚いたように手を口に当て、目を丸くしているソノラにヘラッと笑いかける。



「ま、俺は敵だと思ってねーし。アイツなら、話し合えば何とか応じてくれる可能性もあるしねぇ」
「戦いを避けられるのなら、それに越したことはないのですが……」
「何、そう深刻になるなってキュウマ」



眉間に皺を寄せ、考え込むキュウマに苦笑したその時。


ーー心臓が弾け飛んだような、全身に響き渡る鼓動。
そして同時に襲ってきた、強烈な目眩。



自力で体勢を保つことができなくなり、隣にいたキュウマの肩を何とか掴む。




「っとと、悪い。ちょっと、目眩がして……」
「いえ、気にしてなどいませんよ。……しかし、大丈夫なのですか?」
「んあー、さっきの戦闘で張り切りすぎただけだろ。今になって疲れが出てきたんじゃねーかな」
「そういう時にはしっかりと休養を取ることが大切よ、ユキ?何なら、ラトリクスで精密検査でも……」
「大丈夫、ユキさんは寝れば元気になるから!ま、気ィ使ってくれて有り難うな、アルディラ」



心配してくれたキュウマとアルディラに、軽い笑顔を向ける。
それに若干頬を染めつつ、二人も笑みを返してくれた。




そう、疲れただけだ。

異常に増幅された魔力ながら、召喚術の威力を相当制限したり、起伏の多い地形を駆け回ったり。
シャルトスの扱いに慣れていないにも関わらず、細かく威力を制限したりしたのも理由の一つかもしれないな。



ただ――。



この疲労感は、それだけの理由から来ているのだろうか?
まるで、体の芯から何かが抜けていくような……妙な感覚がするんだが……?




第14話-終-
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