態勢を崩し、膝を突いているギャレオの頭めがけて、踵落としを繰り出す。
ギャレオが態勢を整える間も無く放たれた攻撃は、確実に目標を捉えたかと思われたがーー。


「副隊長っ!」
「……!」


見計らったかのように、剣を持った帝国兵が斬りかかってきた。俺は振り上げた足を戻し、斬撃を回避する。
そして気付いてみれば、いつの間にか周囲を帝国兵に取り囲まれていた。



「大丈夫か、ギャレオ?」
「た、隊長……」


高台で指揮をしていたアズリアが、ゆっくりとギャレオの隣へ歩み寄ってきた。

なーる程、この兵士達の動き、ギャレオが敗北すると予想して既に伏せさせていたってわけか。いやぁ、お見事お見事。



「幾ら貴様でも、武器を持たずにこの人数を一度に相手にするのは厳しいだろう?ユキ」
「はは、随分盛大な再会の歓迎だねぇ。ユキさん照れちゃうなー」
「ふん、戯言を。……貴様には、聞きたいことが山程ある」



アズリアが俺を睨み付けたまま、スッと手を上げる。

それが合図だったらしく、俺を取り囲んでいた帝国兵達が、一斉に飛びかかってきた。


聞きたいこと、ねぇ。
これで俺を捕らえ、無理にでも聞き出すつもりだろうけど。

やれやれ。まだまだ得体が知れねーし、極力使いたくはねーけど……この方法が、一番手っ取り早いからな!


おれはシャルトスを喚び出し、即座に魔力を注ぎ込んだ。


「はあぁぁぁあぁっ!!」


体を回転させるようにシャルトスを大きく振り払うと、四方に刀身と同色の碧の光弾が幾つも撃ち放たれる。
その弾幕を捌ききれなかった帝国兵達は、光弾をまともに受け、全員吹き飛んだ。

どうやら光弾は魔力が具現化したものらしく、属性は物理攻撃に分類されるらしい。


しっかし……限界まで力を抑えたとは言え、まともに受けると大人でも吹き飛ぶ威力か。

本気で使ったら、どうなることやら……。



シャルトスを使う俺の様子を見たアズリアとギャレオは、驚愕の表情を浮かべていた。
シャルトスの力を使っている俺の姿は、銀髪碧眼で、地に着く程の長髪になっているらしい。

加えて、目の前で見せつけられたこの威力……驚かないわけはないか。



「その剣……そうか、貴様が!?」


唸るように呟くアズリア。


「どこまでも……どこまでも私の邪魔をすると言うのか!?貴様はっ!!」
「何……?」



今の発言から察するに、アズリアは少なからず、シャルトスに関わりがあるようだ。


……あー、そういうことか……。


商船に積まれた剣を護衛していた帝国軍は、アズリアの部隊だったわけか。
それなら、アズリア達がこの島に流れ着いたことにも説明が付くし、先程の発言の意味も理解できる。

俺がシャルトスを所持しているということは、「二本の剣の護送」と言う任務を妨害していることに他ならないわけだ。



「……総員、撤退する!」
「っ……待て、アズリア」



アズリア達がシャルトスの力をどれだけ理解しているかは知らないが、押され始めている周囲の状況から、撤退を決めたのだろう。
感情的になりやすいコイツなら、形振り構わず剣を奪いに向かってくると思ったが、見事な判断だ。


だが、アイツをこのまま退かせるわけにはいかない。



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