眼前に、二体の召喚獣の攻撃が迫ったその瞬間――俺は跳躍し、上空に身を踊らせつつ無属性のサモナイト石を二つ掴む。



「な……ッ!?」



驚愕するビジュを余所に、術の詠唱を行う。



「混沌打ち砕け、光将の剣。秩序を切り裂け、闇傑の剣。貫け……シャインセイバー!ダークブリンガー!!」



召喚の光と共に現れたものは、光と闇を纏った無数の剣。
それらは一瞬空中に制止し、俺が着地すると同時に、ビジュ達目掛けて一斉に降り注いでいった。

直撃こそしてはいないが、地面が抉れ、その衝撃でビジュを含む付近の帝国兵達は吹き飛ばされた。


まあ、直撃させないようにわざわざ詠唱して制御したわけだし?てか、余波でこの威力とは、やっぱり俺の魔力とんでもないことになってんだな。




「ぐ……くっ、そぉッ……」



倒れたまま呻くビジュに近寄る。

俺はその隣で屈み、胸倉を掴んで上半身を起こして、耳元でぼそりと呟いた。



「また同じようなことするってんならーーこんなもんじゃ済まさねえぞ」
「ぎひゃアッ!?」



鼻目掛けて拳を飛ばす。

どうやら鼻の骨が折れたらしく、鼻血を流しながら、ビジュはそのまま気絶した。



アイツら全員、一応無事だったわけだし――召喚術かけりゃ治るだろうから、この程度で許してやるか。



この辺りはシャインセイバーとダークブリンガーで一掃したため、そのままビジュを投げ捨て、俺は他のみんなの加勢に向かうことにした。



「ぬうぅぅぅん!」
「うぅおッ!?」



突如として襲いかかってきたのは、この部隊の副隊長らしい、ギャレオという男。
繰り出された正拳を避け、後方に飛び退き、十分な間合いをとる。



うわ……嫌〜な場所に現れるな、コイツ……。



ちょうど俺の進路に立ち塞がる形で、ギャレオは構えを取っている。
しかも先程の攻撃から察するに、コイツはストラで打撃の威力を上げている。厄介な相手だな。

だがビジュは倒れ、隊長のアズリアは未だ高台で静観を決め込んでいる。そして副隊長のギャレオが俺の元にいるということは、方々で戦っているのは一般兵のみということになる。


そんじゃ、俺は集中してコイツの相手が出来るってわけだ。


俺は右手の指をコキリと鳴らすと、一瞬で間合いを詰め、ギャレオの腹部に殴りかかる。



だが、相手も肉弾戦を得意とする者。
俺の攻撃を受け流し、胴に蹴りを放ってきた。


ははン、威力はあるけどトロいな!!



体を回転させて飛び跳ね、ギャレオの足を掴み、転がすように投げ飛ばす。



「ぐむぅっ!?」
「ほら、おまけだ。お釣りはいらねーぜ!」



倒れたギャレオの足目掛けて踵落としを放つが、ギャレオは地面を転がるようにそれを避ける。



「なーんだ、存外俊敏じゃん?」
「ぬぐっ……コイツ、何者だ……!?」



立ち上がったギャレオの左側頭部に蹴りを放つが、腕のガントレットで防がれる。

隙を与えず、軸足にしていた左足を中心に一回転し、地に着いている足を左右入れ替え、左足での蹴りを放つ。
これにはギャレオも対応しきれず、頭への直撃は免れたものの、二の腕を盛大に蹴り飛ばされ、態勢を大きく崩した。

ギャレオの腕からはミシリと骨の軋んだ音がしたが、手応え的に、ヒビが入る一歩手前程度だろう。



デカい分タフだな。面倒くさー……。



「そんじゃー、これで終わりにしてもらおうか!」
「ぐ……!」



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