レックスside




来てくれた――いや、きっと来てくれるって信じてた。



ユキ……!



いつだって、困ったような笑みを浮かべながらも、ユキは俺達を見守っていてくれる。
だから俺も姉さんも、無茶だと言われるような行動に出られるんだ。


ユキがいてくれるから、安心出来るんだ。



「またテメェか……ッ。よくもッ!?よくも、よくもッ!!まとめてェ……ブチ殺して……ッ!」
「テメェがなッ!!」



ユキの姿を認めて激昂するビジュだが――横の茂みから飛び出したカイルの一撃を受け、妙な悲鳴を上げながら倒れた。



「馬鹿ね……こんな無茶して……」
「まぁ、無事だったことですし、これ以上咎めることもないでしょう」



海賊のみんなに続いて、護人のアルディラとキュウマも駆けつけてくれた。

ファルゼンとヤッファの姿がないのは、帝国兵が集落に攻めてきた場合に備えて、そちらの防衛に回っているためだろう。


後で、みんなにはちゃんと謝らないといけないよな……これだけ迷惑かけちゃったんだし。


その時、崖の上にいるアズリアが、とても驚いた様子で口を開いた。



「何故……お前がこんな場所に――海賊共と一緒にいるのだ!答えろ、ユキ!?」
「なっ……アズリア……!?」



アズリアがこの部隊の隊長であることは、流石にユキでも予想だにしなかったのだろう。
ユキは珍しく驚愕に目を見開き、高台にいるアズリアを凝視している。



「……まあ、今はこの場を収集するのが先か……総員、ビジュを援護!!」
「隊長!?」



ビジュを援護しろとの命令に、副隊長と呼ばれていた男は驚いているようだ。



「不心得者であろうとも、見殺しにするわけにもいくまい……。行け、ギャレオ!あいつには、この手で懲罰を与えなくては気が済まぬからな。海賊どもを蹴散らし、あの愚か者めを、私の前に連れてこい!!」
「任務、了解!!」



成る程……例えどんな奴だろうと、それが仲間なら助けるつもりなんだね、アズリア。

懲罰を与えるというのは本当なのだろうが、その裏には、そういったアズリアなりの優しさがあるんだと思った。



だけど、そういうことを悠長に考えてる暇はないみたいだね。

副隊長――ギャレオがアズリアの命令を受け、帝国兵達に攻撃を始めさせた。



「アティ、レックス」



不意にユキに呼びかけられ、顔を上げた所、何かを放り投げられた。



「わわ、っと」
「……って、ユキの刀?」



俺達が掴んだ物は、鞘に入ったままの刀だった。

それぞれの手にある刀を見つめている俺達に、ユキは柔らかく微笑みかけた。



「今度は手放すなよ」



そう言い残し、ユキは戦闘が始まっている方向に駆けていった。


手放すなよ、か……。


船がカイル達に襲撃された時も、先程の学校の時も――俺と姉さんは子供達を守ることが出来ず、危険に晒してしまった。


二度とそんなことが無いように――この刀はそういうことなんだね、ユキ。




「姉さん!」
「ええ。この子達は、今度こそ……私達が守って見せますっ!!」


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