恐らく、教師として上手く振る舞えなかったために、あの四人を怒らせてしまったのだろう。

いくらゲンジにみっちり指導してもらったとは言え、所詮は付け焼き刃。
一日やそこら勉強しただけで、最初から上手くいくわけない、か。



「お前ら!全員無事かッ!?」



励ましの言葉の一つでも言ってやろうかと思った矢先、それはカイルの声によって阻止された。

スカーレルと共に走ってきたカイルは、妙に緊張した顔つきだった。



「何なのよ、兄貴。帰って来るなり?」
「スカーレルが、ついさっき怪しい連中を見たんだよ」



怪しい連中と聞いて、思い浮かべる集団はただ一つ。

皆その結論に達したようで、一気に緊張感が高まる。



「遠目だったけど……あれは、帝国の兵士だわ」
「「っ!?」」
「なっ……!アティさん、レックスさん!?」



スカーレルの言葉を聞くや否や、ヤードの制止の声も聞かず、アティとレックスは各集落のある方角へと走り出した。



あの二人の頭によぎったであろう事態は、俺達にも容易に想像出来る。
そしてそれは、最悪の事態。


帰ってきていない子供達と、森を彷徨いていた帝国兵。

もし、子供達が帝国兵と遭遇したら……?



「ユキ、護人達にはアタシが連絡するわ!」
「スカーレル、頼む。俺達は手分けしてあの二人を探すぞ!帝国兵がどこにいるかわからねーんだ、注意を怠るなよ!!」
「おう!」
「任せて!」
「わかりました!」



先に走り出したスカーレルを筆頭に、俺達は散り散りになって捜索に当たることにした。





俺はユクレス村方面に捜索に行ったのだが、アティとレックスの姿はなかった。



「ユキさんっ!」
「パナシェ?」



不意に俺を呼び止めたのは、パナシェだった。

こちらに駆け寄ってくるその表情は、酷く心配そうで、今にも泣きそうな顔になっていた。
なるべく落ち着かせるために、屈んで目線を合わせ、頭を撫でながらやんわりと微笑みかける。



「どうした?」
「大変なんだ!ぼ、僕、あの四人が、武器を持ったニンゲン達に捕まってるのを見て……それを先生達に話したら、そのニンゲン達がいる場所に行っちゃったんだ!!」
「……っ!」



遅かった、と言うより最悪の結果になった。


帝国兵の指揮を執っているのが、以前戦った刺青の男だとしたら……子供達を人質に取るに違いない。



「僕達がふざけてたせいで、こんなことになって……先生達まで危ない目にあったら……僕……僕……っ」



罪悪感が胸を占めたのか、俺に説明するうちに、パナシェはポロポロと涙を零しだした。

そんなパナシェを強く抱きしめ、目線をしっかりと合わせ、ニコリと微笑みかける。



「悪いと思うなら、次会ったらちゃんと謝ろうぜ?心配しなくても、あの四人ならきっと許してくれるさ」
「ユキさん……」
「心配すんな、後のことは俺に任せとけ」



涙を拭うパナシェの頭をポンポンと軽く叩き、俺は教えてもらった場所へ急ぎ向かう。


アティ達が来たのは、俺が来るほんの少し前らしい。

無事ならいいけど、な……。




第13話-終-
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