「私は『寝るなら風呂に入ってから寝ろ!』って、よく言われてましたねぇ」
「えっ……姉さん、よく言われる程風呂に入ってなかったの……?」



アティの発言に、引きつった笑みを浮かべ、引き気味のレックス。

アティは顔を真っ赤にし、手をブンブン振って弁明を試みる。



「ち、違いますよ!?稀に良く言われてただけですよ!それに、夜入れなかった時は、ちゃんと朝に入ってましたよっ!?」



必死になっているアティを、レックスはやや軽蔑の眼差しで見ている。

アティが面白いので、もうちょっと見ていたい。
だがあまり放置しすぎると、姉弟の中にヒビが入りそうなので、俺からも弁解をしてやることに。



「まあ、本人は朝入ってたって言ってるわけだし、少なくとも今はそんなことねーんだから……あまり汚いものを見る目で見んなって、レックス」
「汚いもの!?やめて下さいその言い方、ちゃんと清潔にしてました!」
「うーん、まあユキがそう言うなら」
「レックス、今のユキの発言にツッコミ無しですか!?色々ツッコむ所ありましたよ!?」



レックスの肩に手を回し、親指を立てて笑いかけると、納得したのかコロッと笑顔になり、俺に抱きついてきた。


アティは「汚くないですもん。毎日欠かさず、お風呂に入ってますもん……」とブツブツ呟きながら、がっくりとうなだれていた。



あっはっは、やっぱりからかい甲斐のある姉弟だ。



「はいはい、悪かった悪かった。だからそんな顔するなよ、アティ?」
「うわ〜ん……ユキ〜……!」



アティの頭をポンポンと叩き、ニコッと微笑みかけると、半泣きになって抱きついてきた。


二人同時は暑苦しいから、さっさと離れてもらおうねー。


さり気なく二人をひっぺがし、テーブルの上に置いた自分のお茶を一気に飲み干す。



「じゃー、俺行ってくるから。家庭教師の仕事頑張れよ」




そう言い残し、二人に手を振ってドアを開ける。

笑顔で「行ってらっしゃい」と言う二人に、「おー」と気の抜けた言葉を返し、俺は船を後にした。


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