「それがサッパリ。何度聞いても、気付くと誤魔化されてるのよねぇ」
「まあ、ユキらしいと言えばらしいけど……」



いつだって、ユキは自分のことを最低限にしか話してくれない。

あの通りの性格なので、話してくれる内容も、どこまでが本当なのか判断が付かない。



「ま、アタシにとってそこはどうでもいいんだけどね。今ユキがここにいて、一緒にいられる……それで十分よ」
「そうですね。私達もそう思います」
「一緒のお風呂に入っても、殴られるだけで許してもらえる仲にはなれたし♪」
「ちょっと待ってスカーレル、その話をもっと詳しく」
「何て?今何て言いました?」



今、スカーレルがサラッととんでもないことを言った。

ユキと一緒のお風呂?
嘘、冗談だろう?俺達が一緒に入ろうとすると、冗談抜きに殺されるんじゃないかってくらいブチ切れるあのユキと?



ななななな何て羨ましい……!



気付けば姉さんと一緒に、鼻息荒くスカーレルに詰め寄っていた。



「ちょっ、落ち着いて二人共。その時はどうしても一人ずつ入れなかったから、カイルと一緒に勢いで……」
「そうか、わかった!この船の一員になれば、ユキと一緒のお風呂に入れるんだね?姉さん、俺今日から海賊になるよ!」
「ちょっと待って下さいレックス!レックスを危ない目に合わせるわけにはいきません!ここは私に任せて下さい!!」
「断る!」
「お姉ちゃんの言うことを聞きなさい!」
「断るッ!!」
「キーッ!!」
「……(この二人だけは絶対に自分の入浴中に近付けるな、ってユキが言ってた意味が今わかったわ)」








ユキside




やることを終えた俺が部屋に戻ると、そこには誰もいなかった。
アティとレックスは、子供達の部屋で家庭教師のお勤め中のようだ。

まあ、個別でやるよりだったら、合同でやった方が効率がいいだろう。
他人の考えに触れられる、いい機会でもあるし。



さーって……先日の帝国兵のことも気になるし、いつでも使えるように武器の手入れでもしておくか……。



いざ戦闘となった時に、武器が駄目になってはどうしようもない。
腰の双刀を外し、刃こぼれがないかを確認して、丹念に手入れをする。


なまくらと言う程悪い刀でもないのだが、所詮は予備で船に置いてあった刀。
以前使用していた物よりも切れ味、硬度、共に心許ない。



この島にはシルターンの集落があるようだし、そこにいい刀があったりしねーかな?

俺は手入れを終えた刀の具合を確かめながら、そんなことを考えていた。



いざとなったらシャルトスがあるから、取り敢えずは安心なんだがな……。



次に、自分の本棚から幾つか召喚術の専門書を選んで、机の上に置く。


アティとレックス曰く、「ユキの持っている本は実戦向けな内容のものばかりだから、教科書として使えるのが少ない」……らしい。

他にも「実戦向けすぎて逆にわかりづらい」や「役に立つの?」等の暴言を吐かれた。



ふざけやがって、人の本棚を勝手に漁った挙句になんて言い草だ。



まあ、ヤードの蔵書程ではないだろうけど。
アイツが持ってる本なんて、それこそ専門的で高度な内容のものばかりであり、俺ですら何が書いてあるかわからないものが結構あったりする。




俺は椅子に座り、選んだ本を開く。

なぜこんな事をしているかと言うと、帝国兵との戦いで、俺の魔力が格段に上がっていることに気付いた。
術の制御を失敗し、暴走させないように、改めて高位召喚術について学び直そうと思ったのだ。


構造さえ掴めば高位召喚術とて、詠唱省略は容易だ。

緊急時、詠唱省略で召喚術を放たねばならない時、暴発等されたらたまらないからな。

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