『やっと会えた……』
え?
『君になら、頼むことができる』
頼む?俺に?
『お願いだ……止めてくれ』
……止めるって、何を?
『絶望を……僕を……止めてくれ……』
おいおい、話が抽象的すぎて何が何だかわかんねーって。そもそも、アンタは誰なんだ?
『僕は……ッ』
えっ?おい、どうしたよ?
『同じカタチ……同じ輝き……同じ波長……』
あれ?アンタ、さっきの奴と違うな。
つーかこれ、俺はどうやって話してんだ?声も頭の中に直接響いてく感じだし……。
『見つけた……』
……この台詞、どこかで聞いたことがあるような?
『さあ……手を伸ばせ!我を……継承せよ!!』
瞬間、地面が喪失したような奇妙な浮遊間を覚える。続いて自分の意識が体から離れていくような、形容し難い感覚に襲われる。
「ッ!?」
ガバッと上体を起こし、頭を抑える。
急に現実に引き戻されたような感覚だ。
先程のは夢だったのだろうか。それにしては、やけに鮮明にーーいや、記憶としては随分曖昧だ。
誰かと話していた記憶はあるのだが、詳細は忘れてしまった。夢を見た時と全く同じ状況なのだが、単に夢だとはどうしても思えない。
俺は溜め息を吐き、前髪を掻き上げて視線を上げる。
「あれ?……あれ?」
目の前に広がるのは、心地良いさざ波の音を響かせる綺麗な海。
辺りは純白に近い砂浜。
後ろは青々と木々が広がる見事な林。
「わーい、絶景だなー……あはははー……」
えーっと……よし、とりあえずここまでの経緯を振り返ってみよう。
まず、剣の奪取のために商船に突入して、俺は華麗に帝国兵を薙ぎ倒した。そしたら何か嵐になって、スカーレルに呼び戻されたから船に戻ろうとして……そんで……。
「ああ、無様にも海に落下したんだった」
ってことはあれか?俺は漂着者か?この無人島で、船を発見するまでここで生活するのか!?
……まー、それはそれで俺にはお似合いかもな。
カイル達には悪いけど、アイツらならそのうち俺のことも忘れて、楽しくやるだろう。
俺がカイル達の海賊団に流れついたのが、だいたい1年前くらいか。
短いような、長いような……こんな俺にも良くしてくれたし、何も言わずに別れるのは気が引けるけど。
「あー……これからどうすっかねぇ……」
取り敢えず、もう一度寝転がって思考を放棄する。
青い空と、一定の間隔で聞こえるさざ波の心地良い音。
実にのどかである。
「ウコケケクェエッ!!」
そして、けたたましいはぐれ召喚獣の声。
実にのどかである。
……ん?いやいや、最後のはおかしいだろ。
俺は立ち上がり、辺りを見回す。
周囲には動物の影すら見えず、どこから聞こえてきたのかと、よく目を凝らして注意深く警戒する。
「一体さっきのは……ッ!?」
ここから少し離れた場所、ちょうど木々が出っ張って死角になっていた場所に、4人の子供達がいた。
その子供達を、はぐれ召喚獣が襲おうとしているのだった。
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